ほぼ100%に近い高い避妊効果があり、その他にも生理痛の改善、月経量の低減、生理不順の改善など様々な効果がある低用量ピル(低容量経口避妊薬、OC)。世界的に見ると日本は低用量ピル後進国といわれていて、欧米に比べると服用している人はまだまだ少ないようです。

副作用が強調されることが多い一方で、低用量ピルのメリットについて正しく理解されておらず、活用が広がっていない面があります。

そこでこの記事では、低用量ピルについて詳しく解説します。バリバリ働く女性にとってもたくさんのメリットがある低用量ピルについて知りたい人はぜひ記事をチェックしてみてください。

低用量ピルとは?どんな薬?

低用量ピルとは 効果 値段 副作用

低用量ピル(OC)は経口避妊薬とも呼ばれ、黄体ホルモン(プロゲステロン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)という2種類の女性ホルモンを合成してできた薬のことです。1日1錠を決まった時間に服用することで、99%以上という高い避妊効果、生理痛やPMS(月経前症候群)の緩和などの効果があります。

低用量ピルには21錠タイプと28錠タイプがありますが、成分の入っている実薬はどちらも21錠です。(28錠タイプの残り7錠は「プラセボ」といい、飲み忘れを防ぐための成分の入っていない錠剤)

低用量ピルの値段はいくらが相場? 保険は適用される?

低用量ピルの値段は1シート2,500〜3,000円ほどが相場です。避妊目的の場合は自由診療になりますが、月経困難症・PMS・子宮内膜症などの病気と診断され、その治療を目的とする場合は保険が適用されます。

超低用量ピルとの違い

低用量ピルよりも女性ホルモンの配合量が少ない「超低用量ピル(UDL)」もあります。

超低用量ピルは、低用量ピルと比べると吐き気や頭痛、下痢などの副作用の症状を軽減できる可能性があるといわれています。低用量ピルの方がからだに合うか、超低用量ピルの方がからだに合うかは個人差があるため、病院で医師に相談しましょう。

なお、超低用量ピルは日本国内では避妊を目的とした使用が認められていないため、避妊を目的とするのであれば「低用量ピル(OC)」を選ぶことになります。

アフターピル(緊急避妊薬)との違い

日本で一般的に「ピル」と呼ばれている薬には「低用量ピル」と「アフターピル」の2種類があります。アフターピルは「緊急避妊薬」と呼ばれ、避妊に失敗した時に使われる薬です。例えば、以下のようなケースです。

  • 低用量ピルを飲み忘れてしまった
  • 性行為中にコンドームが破れてしまった など

アフターピルには、性行為後72時間以内〜120時間以内で服用する薬があります。アフターピルの避妊効果は約95%以上で、服用するのが早ければ早いほど避妊成功率が高いとされているため、早めに服用できるよう注意する必要があります。

アフターピルは今の日本では保険適用外となり、1回約10,000〜20,000円ほどの費用がかかります。

日本で低用量ピルが普及しないのはなぜ?

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国連が発行する「避妊法2019(Contraceptive Use by Method 2019)」のデータによれば、日本を含む世界のピル内服率は以下のようになっています。

  • フランス……33.1%
  • カナダ……28.5%
  • イギリス……26.1%
  • ノルウェー……25.6%
  • タイ……19.6%
  • ・アメリカ……13.7%
  • カンボジア……13.7%
  • ベトナム……10.5%
  • マレーシア……8.8%
  • ミャンマー……8.4%
  • 香港……6.2%
  • 韓国……3.3%
  • 日本……2.9%
  • 中国……2.4%

日本のピル内服率は2.9%と、韓国や中国と同じくらいですが、フランスやカナダ、イギリスやノルウェーなど欧米の先進国と比べると大きな差があることがわかります。

日本で低用量ピルが普及しない理由は「入手方法」「性教育の遅れ」「日本では男性主導の避妊法がメジャーだった」ことの3つだといわれています。

入手方法

日本では婦人科や産婦人科を受診して診察を受けなければ低用量ピルを入手できませんが、海外では低用量ピルもアフターピルも薬局で購入可能です。また、値段も日本よりもずっと安く購入できます。

性教育の遅れ

多くの先進国では、園児の年齢から性教育を始め、成長段階に合わせて子どもに幅広い性教育を行っています。日本の場合は性教育を学ぶ時間が少なく、学校の授業でも低用量ピルの効果やメリットについて教えることがないため、低用量ピルが普及しにくいと考えられています。

日本では男性主導の避妊法がメジャーだった

アメリカ、フランス、日本を対象とした避妊法のデータでは、他の国は女性による避妊法も多く行われていたものの、日本ではコンドームの装着など男性主導の避妊法が主流となっていました。

これまで日本に女性主導の避妊法という考え方が定着していなかったことも、低用量ピルが普及しない理由のひとつと考えられています。

低用量ピルの効果・メリット

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低用量ピルには多くの効果やメリットがあります。毎月ある生理は、仕事やお出かけの予定と重なったり、食欲が増して食べ過ぎる、肌荒れが起こる、イライラしたり不安定になる……など、ストレスや負担も多いもの。

生理痛やPMS、貧血がひどい場合など、低用量ピルを飲んだ方がいいと考えられるケースもあります。生理前・生理中・生理後のつらさに悩んでいる人は、かかりつけの婦人科・産婦人科に低用量ピルについて相談してみてもいいかもしれません。

ここからは、低用量ピルの効果やメリットについて詳しくご紹介します。

高い避妊効果

低用量ピルは、正しく服用すれば99.7%の避妊効果が期待できます。

日本で現在最も使われているメジャーな避妊方法はコンドームで、コンドームは正しく使用すれば98%の避妊効果があるとされていますが、セックスの途中で外れたり、破れてしまったり、失敗すると避妊効果が下がってしまいます。

低用量ピルとコンドームを併用すれば、高い避妊効果が得られ、性感染症予防もできます。

生理予定日をコントロールできる(生理不順の改善)

低用量ピルを服用すると、生理が規則的に来るようになります。生理予定日をコントロールできるため、旅行のときや大切な仕事のときなどは、生理をずらすことも可能です。

また、低用量ピルには7日間の休薬期間がありますが、休薬せずに薬を飲み続けると、その月の生理をスキップすることもできます。

生理痛(月経困難症)改善、貧血(鉄欠乏性貧血)の改善・月経量の低減

低用量ピルには、強い生理痛の症状が起こる「月経困難症」の改善効果もあります。低用量ピルを服用することで、月経困難症の症状は1/3ほどに減少するとされています。

また、月経量が減る効果もあり、2周期を超える服用で43%減少したという報告があります。生理中の経血量が減ることで、貧血(鉄欠乏性貧血)の改善効果も期待できます。

婦人科系疾患の予防ができる

低用量ピルは、婦人科系疾患の予防や改善効果があります。

  • 子宮内膜症の予防・改善
  • 卵巣がんの予防
  • 子宮体がんの予防
  • 良性乳房疾患(乳腺繊維腫や嚢胞性疾患など)の予防
  • 卵巣嚢腫の減少
  • 子宮外妊娠の減少

国際的な学術論文誌Lancet(Vol. 371January 26 2008)で発表された結果によれば、ピルを服用し続けた場合、5年継続で約3割、10年継続で約4割、15年継続では約5割、卵巣がんの発症を抑える効果があると示されています。

その他、ニキビや肌荒れ予防、骨粗鬆症予防の効果も期待できます。

妊娠しやすいからだづくりにつながる

「低用量ピルを飲むと妊娠しにくくなる」「不妊になるのでは?」というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、妊娠しにくくなるということはありません。低用量ピルは、服用をやめると1〜3ヶ月ほどでからだが妊娠可能な状態に戻ります。

低用量ピルを服用すると、排卵が抑えられることでホルモンバランスを一定に保つことができます。ホルモンバランスを整え、卵巣を休ませることができるのも低用量ピルのメリットです。

定期的な子宮頸がん検診で自分のからだのケアができる

クリニックにもよりますが、低用量ピルの服用中は、1年に1回の子宮頸がん検診が必要なところもあります。忙しい中で忘れてしまいがちな自分のケアができることもメリットです。

低用量ピルの種類

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低用量ピルは大きく4種類に分けられます。

  • 第一世代(ノルエチステロン)……シンフェーズ、フルウェルLD、ルナベルULD
  • 第二世代(レボノルゲストレル)……ラベルフィーユ、トリキュラー、ジェミーナ
  • 第三世代(デソゲストレル)……マーベロン、ファボワール
  • 第四世代(ドロスピレノン)……ヤーズ、ヤーズフレックス

たくさんの種類があるため「どれを選べばいいの?」「種類が多過ぎて選べない」という人もいるかもしれませんが、どれが最適かは低用量ピルを飲む目的に合わせてドクターが選びます。まずはクリニックで相談してみましょう。

低用量ピルの副作用はある?

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低用量ピルには副作用があり、飲み始めてから最初の数日間は「吐き気」「むくみ」「頭痛」「むかつき」「乳房の痛み」「体重の増加」などが起こることがあります。また、少量の不正出血が見られることもありますが、4〜5日ほどで収まることがほとんどです。

また、低用量ピルは血栓症、心筋梗塞、脳卒中のリスクが少し高くなるといわれています。喫煙は血栓症のリスクを高めるため、35歳以上でタバコを1日15本以上吸う人は低用量ピルが飲めません。

低用量ピルの注意点

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ここからは、低用量ピルの注意点をご紹介します。

性感染症は予防できない

低用量ピルは正しく服用すれば高い避妊効果がありますが、性感染症に対する予防効果は一切ありません。性感染症の予防のためにも、コンドームを併用する必要があります。

飲み忘れに注意が必要

低用量ピルは、「決まった時間に1日1錠を服用する」ことが重要です。飲み忘れると、望んでいたような効果が得られない可能性があります。

飲み忘れが心配な人は、飲み忘れてしまった場合の対処法について事前にクリニックに聞いておくと安心です。

低用量ピルを上手に活用しよう

低用量ピルは避妊効果だけでなく、つらい生理痛の改善や生理周期のコントロール、婦人科系疾患の予防などたくさんの効果があります。

実際に低用量ピルを服用している婦人科・産婦人科のドクターも多いそうなので、低用量ピルについて気になった方は女性ドクターのいるクリニックに足を運んで、相談してみるのもいいかもしれません。

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