乃木坂46卒業後、sweetでは初のロングインタビュー。これまでのグループへの気持ちや、卒業後の心境、これからの活動に至るまで… 飛鳥ちゃんが秘めている想いとは?冷静に自分を見つめる、その眼差しを、たっぷり語っていただきました。


そっか、私、今年はもうライブに出ないんだなって

インタビューのテーマを伝えると「これから……?」と軽く首を傾けながら、「正直なところ、本当に何も決まってなくて」と照れながら微笑み、視線が宙を漂う。

グループとして活動をしているときは、シングルをリリースして、ライブ、ツアーなどの活動が軸になり、自然と予定が決まっていく。その合間に個人としての仕事が入るという感じでしたが、卒業後は、「この柱となる部分が消えるんです」と、穏やかに語り始めた。

「毎年、2月にバースデーライブをやっていて、そのリハーサルが始まる時期、1月にふと”そっか、私、今年はもうライブに出ないんだ”と。毎年当たり前のようにやっていたことが、今年からなくなる。なるほど、こうやって、今まで10年以上も日常だったものが変わっていくんだなぁと実感しました。でも、寂しいな、恋しいなっていう気持ちが募るというよりは、割と冷静に受け止めていて。自分はちゃんと次の人生に歩みを進められているんだなと、安心しましたね」

自分の想像を上回るような寂寥︎感もなく、喪失感といったものも、そこまで大きくなかったという。

「スマホでグループトークが毎日動いているので、自分から発信はしないにしても、チェックはしていたんです。だから前は、卒業したらきっと寂しくて、逐一見ちゃうんだろうなって想像したこともあって。でも意外と、自然に区切りをつけることごできて、そこでもホッとしました(笑)。乃木坂時代のことは、キレイな思い出として自分の心にしまえているんです」

ファッションの現場に行くとおしゃれさんになった気分に

齋藤さん

ドレス ¥257,400(トリー バーチ/トリー バーチ ジャパン)、バングル ¥57,200(ソワリー)、イヤリング ¥6,500(グレイ)、ブーツ ¥93,500(イエイエ/SHOWROOM CHRMR)

12年前に乃木坂46の一期生オーディションを経て、最年少メンバーとしてメンバー入りを果たした。アンダーや選抜、センターなど、様々なポジションを経験しつつ、グループと共にキャリアも人としても成長してきた。

「本当に、いい環境だったんです。大人になってみると乃木坂46のメンバーたちはみんな優秀だし、先輩後輩を問わず、尊敬できる人ばかりだということに、改めて気づけた。私は叩き上げられた時期があって、本当によかったなって思います。アンダーを経験した時期がなかったら、たぶん、ここまで頑張れなかったんじゃないかな。どこかで、絶対に枯れていたか、人としてよくない方向にいっていた気がする。仕事のやり方や、人との接し方、どこをとっても、私の人生、あの時期があってすごくよかったなって」

これまでにも折に触れて聞かれているだろうが、卒業ということで、転機になった仕事や出来事を聞いてみると。

「転機……なんだろう?『CUTiE』のモデルを始めたこともだし、ANNA SUIのモデルをやらせてもらったのも、大きかったと思います」

モデルとして起用されることや、ファッション誌ねの露出が増えたことで、同性のファンも増えたのもこのころ。本人は気づいていなかったかもしれないが、後輩から憧れることも。

「フッション誌に出させてもらったことは、単純に嬉しかったです。お洋服は好きだし、フッションの現場に行くと、自分もおしゃれさんになった気分が味わえたから(笑)。現場ではメイクをして衣装を着て、照明を当ててもらって、コンセプトに沿ってキレイに撮っていただいて。そこに至るまで、プロのみなさんがあれやこれやと色づけしてくださるので、まんまと気分がよくなっていました(笑)。色んな方が、”ANNA SUI見たよ””今月のページよかったよ”と、持ち上げてくださるのも、嬉しかったな。『CUTiE』から『sweet』に移って、最初は大人の雑誌なので反応が怖かったけど(笑)、ポージングが上手になってきたねとか、握手会で言ってもらう機会も増えたんですよね。”飛鳥ちゃんの、『sweet』のコーデで来ました!”という人もいたりして。これを続けていたら、グループにも還元できるのかな、自分の立ち位置が確立するのかもと感じながら、どんどん楽しくなっていた時期でした」

自分はすごく運がいいと思う、と、その巡り合わせにも感謝してくれた。

「最初に『CUTiE』に、出させていただいたことも、幸運でした。たぶん、あのころの私に合っていたというか、私を形作っていく上で『CUTiE』という現場がとてもいい影響を与えてくれたと思うから。『sweet』に行けたのも、本当に運がよかった。年代的にはまだ若過ぎて、早過ぎたとも思うけど、この雑誌だったから、続けてこれた気がします」

グループを卒業してからも生計は立てていかないと(笑)

これからも、モデルとしての活動は継続していくのか、その胸の内は?

「私は背が低いので、モデルをやります!と、積極的には言えなくて。『sweet』も、乃木坂46というグループの齋藤飛鳥だから、こうして連載もやらせてもらえらんだと思うし、色んなジャンルのお洋服も着させてもらえた。果たして、ひとりになった私に対して、需要がどこまであるのか。求められているかも分からないのに、でしゃばりたくない。世間の声や温度感を察しながら、やっていけたらなと思います」

グループは運命共同体みたいなもので、その一員であるということで得られる安心感もあるだろう。そこから離れ、ソロで活動していく環境となった今、どんな心境の変化があったのか。

「ひとりでお仕事をするときのモチベーションの持っていき方として、例えば、迷いが生じたとしても、どこかでグループに還元できれば、という考え方はあったと思う。それは本当に綺麗事ではなく、本当に心底、ナチュラルにそう感じていたから。そう思えるグループがあったから、頑張れた部分も大きかったな。私自身、どちらかといえばマイペースなほうですし、グループのメンバーも個性の強いコたちではあるけれど、それで摩擦が生じるという感じでもなくて。嚙み合わない部分があったとしても、笑いに変えながら、ゆる~く、ほがらかに消化し合ってきたというか。私の場合は特に、卒業をメンバーに伝えてからの期間は、本当に限りある時間という認識で、とても大切に過ごすことができました」

『あの頃、君を追いかけた』『映像研には手を出すな!』『サイド バイ サイド 隣にいる人』など、映画出演でも注目を浴びてきたが、「女優になりたいとか、なかなか大きな声では言えない」と、こちらも決して、前のめりな発言はしない。というのも、これまでも自ら切り開いていくといよりは、周りの人の助言で飛び込んできたから。それだけ、スタッフに信頼を寄せているということなのだろうか。

「確かにそうですね。信頼している人からすすめられて、そこから私も考えて(笑)。基本、すごく慎重なんです。今までのアイドル人生で、自分の色んなキャラクターを見せてきて、それによる失敗も成功も、ダイレクトに感じてきた。自分の中での正解と不正解が、なんとなく決まってきた感じ。どうかな?って思ったら、飲み込まずに正直な気持ちをストレートに伝えます。スタッフさんは私のことも信頼してくださっているので、どうする?どう思う?と、必ず聞いてくれる。グループを卒業してからも生計は立てていかないといけないので(笑)、この先もいろいろと表現活動はしていくと思います。のんびり、あたたかく見守ってください」

photo_KAZUTAKA NAKAMURA
styling_SHOCO
hair & meke-up_KENJI TAKAGAKI[SHIMA]
model_ASUKA SAITO
interview & text_KYOKO NEGISHI
web edit_KIMIE WACHI[SWEETWEB]
※記事の内容はsweet2023年6月号のものになります。
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください。