ー今回は藤ヶ谷さんご自身でアプローチして映画化になったとお伺いしました。実際はどんな風にアプローチされたのですか?
僕は「A-studio+」に出演させていただいているんですけど、色々取材を俳優さん達にさせていただく中でどうやら結構な数の方たちが自分達から動いているというのを知ったんです。実際に小説の『傲慢と善良』を読んだ時は俺が演じたい!というよりもすごい作品だった!という感覚だったんですけど、本屋さんに行く度に“実写化”という帯を他の小説で見かけることも多くてスピーディーだなとは思ってたんです。そこで『傲慢と善良』は誰も形にしていないなと気づいて、自分が演じることができなかったら一生後悔する作品なんだろうなって。演じたい作品なんだろうなって、チャンスはあるのかもしれないと思い版元を調べていただくというところからのスタートでした。でも誰に言えばいいかもわからないし、仕組みを調べてもらったら版権が必要だと知りどこの会社がそれを持っているのか、どうやって動くのかとか手探りで周りの方の協力もあってアプローチできて映画化に繋がりました。
ー小説を読まれたとき自分のために書かれたんじゃないか、と思うぐらい自分のモヤモヤを言語化されたと感じられたそうですが、どこの部分で1番そのように感じられましたか?
自分も振り返ると24歳でデビューして、全く知らない世界に飛び込んだ時にいろんな方に「こういうのが素敵です」「こういうのが絶対似合いますよ」とかを言われ続けていると、気づいたら俺ってそういう風であった方がいいんだろうなって架のその感覚って分かるような気がしてたんですよ。ただそれって苦しいだけじゃなくて、持ち上げていただいたことでできるようになったこともあるし、世間からついたイメージもある。それと同時に何か手放していたこともあるだろうなって思うんです。デビュー当時は自分で選択するということが出来なかったので、言われたことだけをやっていたんです。それはきっとデビューしたばかりの新人がいきなり「これやりたいです!」って言っても出来なかったと思うし、まずは藤ヶ谷太輔という人を知っていただいて、信頼の土台ができた上でこの人にやってもらおうかなってなるし、自分で選択できなかったということは今思うと大事だったんだなと思いますね。すごい苦しいとかもなかったし、でも自分が今どこの位置にいるのかもわからないしみたいに思っていたことを辻村さんが「値段」っていうのでめちゃめちゃ秀逸で面白いなって思いました。