――お二人の役柄はどちらも一人で困難を抱え込んじゃってますよね。お互いの役に対してどのように感じていましたか?

岸井かわいそうなくらい背負い込んでますよね。日向は彩人とは恋人同士だけど、家族ではないから介入できる範囲がすごく少ないじゃないですか。彩人を見ていると「申し訳ないな」と思うところもあるくらい。

磯村:そうそう。そう思ってくれてるんだろうな、と感じてましたよ。逆にそれを見ていて僕も辛かったですから。でもその状態をキープしていた岸井さんの現場の立ち方は、やっぱりすごいと思いましたし、助かりました。

彩人が面倒を見ているお母さん役を演じた霧島(れいか)さんも、本当にすごかったですから。目がもう全然違いましたし。共演の皆さんそれぞれ、本当にすごい打ち込み方をしてらっしゃるな、と思ってました。それだけに、僕はそこにいるだけで彩人になれた、と思ってます。

岸井:そう、皆さんすごかった。しかも、彩人って衣装がすごく汚してあるんですけど、そういう細かいところで作品の世界に入り込めるという感じがしました。

壮平を演じた福山(翔大)さんなんて、ずっとプロテイン振ってるし。撮影現場が、「この人たち、ここで生活してる」っていう雰囲気だったんです。

だから、改めまして「よろしくお願いします」という空気ではなく、そこにいるだけで私は日向、磯村さんは彩人になってた感じがします。監督も役者がどう出るか、っていうリアクションを見ながら演出をやってらっしゃったと思います。

磯村:すごい見られている気はしましたよね。カメラが回ってないところでも役者がどういるのかなっていう感じで見てた気がします。だって、視線をずっと感じましたから(笑)。

ただ、それも嫌な感じではなく、安心して何をやっても大丈夫っていう気持ちにさせてもらえました。監督が作る現場が非常に丁寧で、俳優、スタッフに対しても親身に向き合ってくださったんで……これはあまり言いたくないですけど、「いい監督」だと思います(笑)。

 

――彩人が一人でお母さんを支えているという、社会問題にもなっている介護する側の実態みたいなところはどう感じられました?

磯村:この作品のためにヤングケアラーに関する取材をしていく中で、実際に認知症を患っている方とケアしているご家族のお話を聞いたんですが、まさに一人で背負い込んでやられていた、というパターンで。その方々はご夫婦で、ご主人が認知症を患って、奥様がずっと支えてらっしゃいました。彼女は「逃げたいっていうことが何回もあったし、自分が死んでもいいって思う瞬間も何回もあった」っておっしゃっていたんですよ。

でも、そうせずにずっと隣で介護をし続けてこられたか、という原動力は、娘さんの存在があったから。「娘がいなかったら、私はもう死んでいました」ってさらっと言ってらっしゃったのが強烈な印象に残っています。当事者の2人以外の第三者、それは子供でもいいし兄弟でもいいし、恋人でもいいと思うんですけど、そういった存在があることで支えになっていると思い、それを彩人に取り入れたんです。

岸井私も勉強で認知症の方々のレポートを拝読しました。身近な人、家族が突然患う可能性もあるし、自分が突然彩人のような当事者になる可能性もある、ということを実感しましたね。

岸井ゆきの