2年前のアカデミー賞主演男優賞候補になったポール・メスカルは、いまやハリウッド男子の大注目株。山田太一原作の『異人たちとの夏』をイギリスを舞台にリメイクした『異人たち』、そして2000年の大傑作『グラディエーター』の続編『グラディエーターll 英雄を呼ぶ声』でも主演を務め、早くも次期オスカー候補の呼び声が高い。

「『グラディエーター〜』はリドリー・スコット監督と30分くらいリモート会議をしたんだけど、ほとんど雑談だったんだ。なのに、2週間後にルキウスのオファーが来た。驚いたよね」と、オファー時を振り返る。

「監督の映画は全部観ているよ。なかでも2000年の『グラディエーター』は本に傑作だと思ってた。12歳くらいのころに、父と一緒に観たのが最初だったと思うけど、当時僕の周りではあの映画を父親が息子に観せる映画の定番だったんだよ。ただ、あのとき観たときと、今回オファーをいただいて観直したときの感覚はまるで違ってた。昔はアクションシーンに夢中になったんだけど、今は物語の厚みに圧倒されている。年を重ねるのと同じく、成長する映画なんだよね。そんな作品の続編で一番重要な役を演じることができるのは光栄なことだ」

本作で彼が演じたルキウスは、前帝コモドゥスの姉ルッシラの息子で、混乱のローマを亡命しアフリカで生き延びていた。そこにルッシラの夫マルクスが率いるローマ軍が侵攻し、ルキウスは身元不明のまま奴隷としてローマに戻る。血族の因縁、残酷な戦乱の世……シェイクスピア悲劇からの引用もある重厚なストーリーだ。

「監督は『タイタス・アンドロニカス』からの引用をかなり多くしているんだけど、芝居自体はシェイクスピア演劇っぽくならないようにしたんだ。それをやっちゃうと古くさくなるからね。父が古代ローマの歴史に詳しかったし、舞台でシェイクスピア悲劇をたくさんやってきたから、その作品に対する知識はそこそこあって、リサーチも順調にできたと思う。だけど、撮影が始まったらそれどころじゃなくて、それまでの知識は役に立たなかったね(笑)」