日本では翻訳小説『巌窟王』のほか、同タイトルでマンガやアニメにもなったほど有名なフランスの名著、アレクサンドル・デュマ・ペールの『モンテ・クリスト伯』。 復讐劇の古典として世界中で愛され続け、アメリカ、フランスで何度も映画・ドラマ化されてきているこの作品、これまでで一番詳細な解釈と映像美で再映画化したのが『モンテ・クリスト伯』です。

Anamaria Vartolomei
アナマリア・ヴァルトロメイ

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Anamaria Vartolomei
1999年4月9日、ルーマニア生まれ。2011年の『ヴィオレッタ』でスクリーンデビュー。2021年の主演作『あのこと』でセザール賞有望女優賞などを獲得。 2024年開催の東京国際映画祭では出演作『トラフィック』で最優秀女優賞を獲得した。


今年行われたフランスの映画賞、セザール賞で最多14部門で候補になり、美術賞と衣装デザイン賞を受賞した本作。大富豪モンテ・クリスト伯となって帰ってきたダンテスに助けられるエデを演じたアナマリア・ヴァルトロメイに話を聞いたところ、「じつは原作を読んだことがないんですよ」とな。びっくり。

「原作は日本でも相当人気なんですってね。私の父は何度も読んでいるし、映画化された作品は全部観ているほどのファンなので、どういう物語かは知っていたんですが、自分では読んだことがなかったんです。おかげで父はこの映画の出演をすごく喜んでくれました(笑)。で、原作を読んだことがないことを正直に監督に伝えたところ、だったらそのまま読まないで、と言われました。というのも、私が演じたキャラクターは、小説の中での描かれ方とだいぶ違うので、影響を受けないですむから。が、新しい側面を描くことにチャレンジしているので、プレッシャーはありましたね」

無実の罪を着せられて投獄された主人公が、脱獄して自分を陥れた人々への復讐に乗り出す、というお話。シンプルな復讐劇だけに、これまでの映像化では様々なチャレンジがされており、それは本作も。モンテ・クリスト伯を取り巻くキャラクターの掘り下げ方や、最新の映像技術による壮大な景観などなど、挑戦はたくさん。「私が一番気に入ってるのは衣装ですね」とアナマリア。

「とにかく重かったんですよ(笑)。でも、舞台となっている時代のドレスだから重くて当たり前。すると自然と姿勢が変わるし、演じる上でもとても助けになりました。私が演じたエデは、親と離れ離れになってひとりでいるところをモンテ・クリスト伯に救われるんですが、すごくロマンティックな役で。彼のことを愛することで強く生きられるようになるんですよ」

今年は本作をはじめ、ハリウッド大作『ミッキー17』にも出演した彼女。「製作国や規模の大小は関係なく、いい脚本があればなんでもチャレンジしたいんです」という。
「模範となるのは、スカーレット・ヨハンソンやペネロペ・クルスのような仕事の仕方。 彼女らもきっと作品の規模とかで選んできていないと思いますし、私もそうしていきたいんですよね」