だんだん肌寒くなってくると、キュッと人恋しくなったり、太陽が恋しくて南の島でのんびりしたくなったり…そんな風に、ふとどこか遠くへ思いを馳せることが増えませんか?

 

忙しくてなかなかお休みが取れなくても、本を開けば一瞬で世界中どこへでもトリップできるのが読書のいいところ。知らない街のカフェで人間観察をしたり、美しい景色にただ心を空っぽにしたり。そんな贅沢な時間を、読書はいつでもプレゼントしてくれます。

 

今回は、読んでいるだけで次の旅先を決めたくなるような、「トリップ本」を5冊セレクトしました。温かいドリンクをお供に、ページをめくる旅に出かけましょう♡

『午前三時のルースター』垣根涼介 | 熱気に満ちた90年代ベトナム。失くしたものを探す心の旅

『午前三時のルースター』垣根涼介

1990年代のベトナムへと、一気にタイムトリップする物語。

日本とはまったく違う、エネルギッシュな街の熱気、喧騒(けんそう)、そしてどこか切ない空気感…。そんな五感を刺激するベトナムを舞台に、物語は進みます。

旅行代理店で働く主人公「長瀬」は、失踪した父親を探す少年に同行し、現地の娼婦や運転手の協力を得て父親の足跡をたどることに。そこで彼らは切ない真実と向き合うことになります。

見どころは、 単なる観光旅行ではない、人の内面へと深く潜っていくような「旅」の描写です。心に飢えを抱き、何かを求めて「今の自分」から突き抜けようとする人々の姿が、強く心に響きます。

ハードボイルドな世界観ですが、今の日常に少し物足りなさを感じている人に、刺さるものがあるはずです。ボリュームはしっかりありますが、父親探しの謎とミステリアスな展開に引き込まれ、秋の夜長にじっくりとこの濃密な世界に浸れます。