近年、パンデミックや社会の変化に伴って、人との距離感や心の距離への関心が高まり、本音で話すことや、繋がりを再構築することの重要性に注目が集まっています。

しかし、人との距離感を測り違えないようにと、大人になってからは自分の意見を誰かに伝えたり、誰かの価値観を掘り下げることに慎重になってしまったという女性も多いのではないでしょうか。自分のことを理解して欲しい、相手のことを理解したい……そんな思いはあっても、伝えるきっかけを作るのも、勇気を持つことも、簡単ではありません。

モヤモヤする気持ちを放置していると、そのうち自分のもともとの価値観すら、よく分からなくなってしまうこともあります。そんな、誰かや自分とのコミュニケーション不全を、カードゲーム形式で深掘りしていくプロダクトがあることをご存じですか?

「セキララカード」は、日本生まれの“conversation-starter cards(会話のきっかけカード)”。海外では、若い世代やミレニアム世代の間で人気で、「意味のある対話」「感情的なつながり」「自己開示」を促す手段として支持されています。

プロダクトの生みの親である藤原紗耶さん(28)は、自身がコミュニケーション面で問題を抱えていたことをきっかけに、2年前に「セキララカード」の発売をスタート。藤原さんと向き合う中で、私たちが親しい人とのコミュニケーションや自分との対話の中で、気づかない間にやってしまう“悪いクセ”も見えてきました。

恋人にNOと言えない…自身の苦い経験から生まれた「セキララカード」

「セキララカード」は現在、用途によって質問内容が異なるカードが7種類展開されています。カップルや夫婦で遊べる『For Couples』、親しい友人などと使える『For Friends』、自身との深い対話を促す『For Self-Reflection』……大きく「誰かとの対話に利用できるカード」と「自分との対話に利用できるカード」に分かれます。

「セキララカードは、私自身の深い悩みから生まれたプロダクトです。もともと、20代前半までは恋愛でかなりこじらせていました。自分の思っていることを上手く伝えられなかったり、何か我慢しなければいけないと思いこんでいることが多かったです。思い返せば、恋愛に関する自身の思い込みもたくさんあって、勝手にストレスを感じていました」

恋人などの親しい間柄でも、コミュニケーションに問題が生まれることは多いもの。お互いに「分かってほしい」という気持ちがあるからこそ、主張の押し付け合いになってしまうこともあれば、どちらかが一方的に我慢してしまうこともあります。

「嫌なことを嫌と言えないことを友達に相談すると、決まって『ちゃんと話した方がいい』とアドバイスされていたんですが、そんなことは私自身も分かっていました。ただ、具体的な会話の始め方や、聞き方が分からなかったんです。

そんな時に知ったのが、海外で流行していたカップル用カードゲームでした。お互い質問に対して話していくだけなら、自分から張り切って話そうと意気込まなくても、質問カードそのものが話し合いのきっかけを作ってくれると思いました

カップル用カードは、恋愛で我慢することが多かった藤原さんにとってぴったりのツールになったそう。しかし、日本語のカードを探してみたものの見つからず、自分で作ることを決意。

「最初に作った『For Couples』は自分のために作ったようなものだったのですが、小ロットで展開し始めてからは、同年代の女性から、我慢ばかりの生活から救われたという嬉しい声が届き始めました。

結婚前にお互いの価値観を理解するために使ったという方や、結婚歴20年の方が夫婦の会話がなくなって使ったなど、私も想像していなかった使い方をしてくださる方がたくさんいました。そこで、本腰を入れてこのプロダクトを世に広めたいと思うようになり、会社を立ち上げることにしました」