――「曲を書くことは自分にとって救い」とありますが、文章を書くことはどんな変化をもたらしましたか。

あの「この本では新しいことを書こうとは思ってなくて、当たり前なこと――周りからしたらどうでもいいことはぼくにとってどうでもよくないっていうことを言いたいがために、書いたんですね。今まで持っていた考えをまとめていたつもりだったんですけど、書いているうちに、『自分はこういう考えなんだな』とか『こういう思いなんだな』と整理できたり、気づけたので。そういう意味では、書くことで整理されてく、研ぎ澄まされてる感じはありました」

――「自分らしさは流動的でいい」とありますが、デビューから今までで自分に変化があったと実感したことは?

あの「結構やっぱブレない方かなとは自分でも思うんですけど、でも昔はあまりにもぶれなさすぎたというところがある中で、この数年で自分らしさってぶれないことはもちろん大事だけど、その自分らしさに縛られないためには、もっともっと自分を知って、自分がこうやって気分が変わることとかも受け入れれること、それを知ると一番自分らしくいれるなっていうことに気づけたから。考えのバリエーションが増えた、ということが、自分でも流動的になったなって思いました」

――かなり正直に振り返っている過去のエピソードがたくさんありますが、そのつらさは?

あの「それはありました。過去のことは、やっぱり思い出したくないものがほとんどだったので。それをわざわざ振り返ることが嫌だったし、けど、それが自分の人生のつき物だったから。それを書いけば書くほど、自分がその物事に対してどこまで向き合えてたとか、どこまで許せてたのか、許せてないのかっていうのがわかりました」

――この振り返りって、ご自身のアーティストとしての活動にも影響すると思いますか?

あの「そうですね、それは今の自分に必要なことでもあったので。
読んでほしくないとは言ったけど、書いて後悔はしてないので。もちろんこれは自伝ではないので、全ては全く話してないし、何割かの話をその思考につなげると、つなげる過程で必要なものは書いた、という感じなんで、それを言ったことで、今後はもうちょい気楽になるかもしれないです。書く理由のひとつでもあったんですけど、自分の初期値というか、自分の考えとかを言葉の世界だけで提示するっていう挑戦みたいな。ひとつ段階を踏めた、初期値を本として言葉で残すことによって、次に行ける気持ちになりました。」