社会の“歪み”を目の当たりにしながらも
世の中はこうして繰り返されていく

齋藤飛鳥連載
ワンピース ¥21,780(ゴスペル/THE WALL SHOWROOM)、つけ襟 ¥99,000(tanakadaisuke)、バングル ¥28,600、左手につけた4連ボールリング ¥15,400、右手につけた3連ボールリング ¥14,300(全てSoierie)

「この作品と出会ったのは、私が10代のころ。今まで読んだ本の中で心に残る作品がいくつかありますが、そのなかでも印象的だったのがこの本です。

表紙のインパクトで手に取り巻末の内容紹介を見て、読んでみたいと思ったのがきっかけ。登場人物の描かれ方が具体的で、読んでいて色んな感情が芽生えて作品の中に引き込まれました。悲劇は起こるけれど、でもそれは“みんなにとっての悲劇ではない”から、難しいですよね……。

読み終わったあとは絶望感が強かったり、全然すっきりとしなくてかなり後味が残る作品という印象でしたが、何度か読み返すたびに、起きた現実は変わらないけれど、そのなかでも新しい形にほんの少し向かっていっているような、うっすらと光が差すような結末を感じることができました。世の中や社会って、こういう形の繰り返しで進んでいるよね、って。『この本を読んだから、明日から自分の行動に気をつけよう』というのはあまりに短絡的過ぎるけど、「風が吹けば桶屋が儲かる」ように、一見無関係のことでもそれは社会の中で無自覚に連鎖しているんだろうな、と……。

ひとつひとつの行動に正誤判定をつけるのは難しいけど、なんとなくこれってモラルに反するよね、と気づけるだけでも常識はあるのかなと安心するような気がします。若い人にも年齢を重ねた人にも、この本は気づきがありそう。色々、考えさせられる作品です。

今回も、この作品にぴったりのイメージで撮っていただきました。物語の内容的にもダークなトーンで表現することもできたけど、あえて衣装はきらびやかだったり、メイクもペールトーンを基調にポイントで強い色を差したり。残像感や背景に歪みを加えたりと、一筋縄じゃいかないこの物語に合うように、写真も複雑にしていただき、素敵に撮影できたと思います」