コロナ禍で外食に行きづらい今、おうちでご飯を食べるシーンが出てくるコミックを読んで、お料理する気分を高めてみませんか? レシピが載っているコミックもあるので、お料理本代わりに読むのもオススメです。


かしましめし(1)~(4)

おかざき真里/祥伝社

メーカーの宣伝部で働くナカムラ、広告代理店の営業の英治、そして千春。3人は美大の同級生で、友人の葬儀で再会し、それから千春の家でときどき家飲みする関係になった。食材を買って持ち寄り、一緒に料理しながらお酒を飲む。メニューは、ホットプレートで作れる「包まないギョーザ」や、魚焼き器で手軽に作れる「ホイル焼き」など、ワイワイ作りながら美味しく食べられるものが中心(レシピが載っているので、まねして作ることもできる!)。アツアツの美味しい料理をハフハフ食べる3人の表情がとてもよく、食べる幸せが伝わってくる。

社内恋愛の婚約者に裏切られたナカムラ、同性の恋人とうまくいっていない英治、心が折れて退職した千春。みんな心のどこかに傷があるけれど、お互いにあえてそれには触れず、ただただ食を囲んで擬似家族的な関係になっていきます。

サラリーマン漫画の一面もあって、会社や仕事に疲弊している人は共感が止まらないかも。取引先に謝るシーン、上司から理不尽な異動を命じられるシーン。本当の自分を隠してキャラクターを作って会社でサバイブするシーン……。そんなもやもやを抱えながらも、友達とご飯を食べることで救われていくのです。


 

サチのお寺ごはん(1)~(9)

かねもりあやみ、久住昌之(原案協力)、青江覚峰(監修)/秋田書店

こちらの物語のヒロインの名前は、なんと「臼井 幸(うすいさち)」。名前の通り、幸の薄い人生を歩んできた彼女は、自己肯定感が低くて座右の銘は『人生 期待したら負け』というもの。常にあきらめていて、食べることにも意欲がなくて、毎日コンビニでその日の食を適当に選ぶ生活を送っていた幸。しかしある日、コンビニで「一緒に飲もうよ」と声を掛けてきた男子に連れていかれた先が、なんとお寺! そのお寺の住職の作ってくれたナスのお味噌汁の美味しさに感激し、幸は涙が出そうになってしまって……。それ以来、丁寧に作る精進料理に魅せられていきます。

旬の野菜を使い、丁寧にだしをとって作るお料理はとてもヘルシーで、ジャンクな食生活を送ってきた幸の心を癒やします。仕事で悩んだり、友人と自分を比較して落ち込んだり、そんなときに心にしみる住職の言葉と、優しい味のお料理。丁寧にお料理することで、少しずつ自分が変わっていくのを実感していく幸の姿に励まされるストーリー。レシピが載っているので、幸と一緒に精進料理を学べるのも嬉しい。


 

すみれ先生は料理したくない(1)~(2)

大久保ヒロミ/ぶんか社

最後に紹介するのは、かなり異色の料理コメディ。

ひとり暮らしで仕事に追われて、「帰ってきても食べるものがない! 料理する気力もない!」というアラサー女子も多いのでは? このコミックの主人公のすみれ先生もまさにそんな女性。ピアノの先生をしている30歳で、ピアノの先生というイメージ通り優雅な美人。周囲の人達は、「女性らしくて、きっと料理上手に違いない」と噂しているけれど、実は料理は大嫌いというすみれ。仕事でくたくたに疲れて帰ってきても、家には何も食べ物はなく、冷蔵庫の中の干からびかけた野菜で何か作れるものはないかとレシピサイトを見るけれど、「簡単!」と書いているレシピを見ても、その工程の多さに憤り、洗い物をすることを考えるだけでうんざりし、大好きなピアノに向かって心の声を演奏にぶつけてしまう(それが作曲の原動力に)。味噌汁一つ作るシーンでも、料理嫌いな人には共感せざるを得ないセリフの一つ一つに爆笑必至(電車など外で読むのは注意!)。

コンビニだってレトルトだって充実している時代、作ることがストレスになるんだったら作らなくてもいいんだよって言ってくれる。作れない、作らないことも笑いと共に肯定してくれるコミックです。


どの漫画にも共通して言えることだけど、ご飯を食べているときの表情って本当に素晴らしい! 悲しいことがあるときこそ、美味しいものを食べること。ご飯を共有できる仲間や家族がいること。一人でも、食べることを大事にすること。食べることがもたらす幸せを、あらためて気づかせてくれます。



●千田あすか
編集・ライター。シンガポール在住経験からのシンガポール情報や、書評などのカルチャー情報をお届けします。インスタグラム @aska_chida



edit & text_ASUKA CHIDA
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