すごいドラマが、始まった。「ねえ昨日の放送観た?」思わずそう友人と話したくなるような、絶対に見逃せないドラマ。いよいよ先週より放送がスタートした、ABEMA新オリジナルドラマ『30までにとうるさくて』。
現代の東京を生き抜く29歳独身女性たちの恋、キャリア、性、友情の物語。“30歳”という節目の年齢を意識したことがある女性なら必ず共感できるはず。これこそ、リアル。
このドラマと連動し、sweetWEBでは、ドラマの脚本協力を担当した大人気作家LiLyさんによる短期連載をスタート。金曜日の夜21時は、ここでしか読めない素敵なエッセイに酔いしれて♡ 


『30までにと “自分の声が” うるさくて』

             by LiLy

#01
「――――人生設計、ムズすぎじゃね? 」

 

 このドラマの趣旨を初めて聞いた時には「もう令和だし、30歳になるのが怖いって設定は、ちょっと古いかも? 」 などとのたまった私ですが、「30までに」という「呪い」を自分自身にかけては焦りまくり、額に変な汗をかきながら猛スピードで「20代」を生きていたのは、他の誰でもない10年前の自分でした……。

 「20代のうちにキャリアの足場をつくらなきゃいけないし、
 運命の相手とも出会わなければならないし、
 出会うだけではなく結婚したいと思うレベルで
 愛し合わねばならないし、
 子供が欲しい私は妊娠もしたいと思っているし、
 30歳までに! と思えば思うほどに
 “無理そうすぎて”身動きがとれなくなる」と
 20代の頃に書いたエッセイ(デビュー作)の中にも当時の心の叫びが残っている。

 「くはぁ、焦る。時間がない。焦りすぎて動けない。え、本末転倒だ……」(何も出来ずに数日経過)→ 「ハッ! ヤバイ! 私は何をしているんだ。とにかく動かなきゃ! 」(覚醒して計画を実行して疲労)→出だしに戻る、をエンドレスリピート。
 ギャグ漫画のように、猛ダッシュとフリーズとを繰り返しながらひたすら一人で頭の中で喋り続けていた。
 「そんなに焦らなくても大丈夫だよ」と声をかけてくださった優しいオトナたちもいたけれど、あなたが大丈夫だったからって私の人生の保証にはならない、とフルシカトで走り続けた。

――――やっぱり、自分の声が一番うるさかった。
他人の声すら届かないレベルでうるさすぎた(笑)。

そして、
自分の声が
加速させてくる
「焦り」がとにかく
しんどかった……!!

 だからこそ、今リアルタイムで焦っている女の子たちにも「30なんてまだまだ若いから、焦らなくて大丈夫だよ」って優しい言葉をかけたい気持ちは山々だけど(半分はそれも本音だけど)、実際問題としてはやっぱりその半分はキレイゴトと思う。

何故なら、
アラサーのあなたが
過ごすココからの十年間が
あなたの人生のベースをつくる。

30代が40代をつくり40代が50代をつくる、と人生はこの繰り返しなのだけど、やっぱり人生の土台をつくる「選択」と「決断」が「密集」しているのが20代と30代。「この二十年間」で「土台」は「ほぼほぼかたまる」と言っても過言ではない。

ちょっとやめてよ、
更に焦るんですけど! って声が聞こえてきそう。
だけど今回私が伝えたいのは
「その焦りを行動力へと引火させることの重要性」。

 思い出してみて欲しい。学生時代。
試験勉強中に「全然やってないよ〜(汗)」という同級生たちからのメールについていた汗マークを信じ切ってボーッとしていたら赤点を取ったのは自分だけだった、という経験をお持ちではないだろうか。
 私は何十回もある(笑)。
 人間、放っておくと、どんどんラクなほうへと流れるようにできている。個人差があるとは思うけど、基本的に面倒くさがり屋な性格の私の場合は、焦りまくって初めてスイッチが入るところがある。が、焦りすぎると今度は何もできなくなるので、このバランスが非常に難しいわけだけどーーーー

「緊張感」って時には大切。
「このままではヤバイ! 」
と自分を奮い立たせてナンボ。

 だってね、例の試験勉強中に仲間たちがもし「準備完了ほぼ完璧(炎)」というメールを送りまくってきたとしたら、「マジかよ何くそ」精神でその時点からでも火がついて、私も平均点くらいは取れたと思うわけ(笑)。

「まだまだ若いから大丈夫だ」と言うのは簡単だけど
「若い」と言われる年齢は「そうそう長くは続かない」。

そして、加速する焦りを鎮めるためには
少しでも前へ進むこと以外に方法はない。

「でも、自分が進みたい“前”が
どの方向なのかがまだ掴めない?

今の仕事をずっと続けたいかわからない。
転職するにも何がしたいかわからない。
結婚/出産も本当にしたいかわからない。

興味があることならば
たくさんあるけれど、
続くかどうかもわからない
その“好奇心”のために
今のこの貴重な時間と
エネルギーを使うのは
もったいない? 」
 
NO!!!
その時間と体力、
ケチるべからず!!!

実際にやってみて自分には向いていないと思ったら、辞めていい。結局辞めることになるなら、そこに割いた時間は無駄か? 

いいえ、全く!!!

「これにも興味はあるんだよなぁ〜」と思っている=迷っている時期を長引かせるよりも、実際にやってみて向いていないと体感することで「選択肢から外す」ことができる。これって実はかなりの前進!
たとえば、ライトなところでいえば、ヨガやピラティス。
ハマり込めばインストラクターに転身する可能性だって秘めている。「ずっと興味はあった」状態のまま十年を過ごすより、すぐに十回でもやってみて続かないならさっさと辞めればいい。

そして、超極端なことをいえば「結婚」だってそうかも? 

 20代前半のうちに恋に落ちた勢いで結婚し、“笑ってもがいて暴れて悩んで泣いて”ってのを数年で全部やり、これまた20代のうちに離婚。そこで見抜いた“恋愛と結婚の違い”や、“自分の性質と相手に求めるもの”とを更新した上で30歳前後に再婚し、今「結婚20周年」を祝っている50代の知り合いが何人もいるのだ。
 もちろんこれは稀な例ではあるけれど、スタートダッシュの早さと自分の性質を見極める冷静さを含めた学習能力の高さの掛け算=アッパレだ! と思わされるケースであることは間違いない。

 自分がすすむべき方向性こそ、
 「トライアンドエラー」を
 自ら繰り返すことでしか得られない。

 自分自身の「欠点」を含めた
 「性質」を見つけ出すためにも、
 スタートダッシュは早ければ早い方が良い。

 「欠点」「弱点」「生まれ持った欠落」
 これは人生設計に欠かせないキーワード。
 「得意なこと」から道を探しがちだが、
 あなどれないのが「苦手なこと」だ。

 しかも「苦手なことから逃げたい気持ち」は時として、
 「やりたいことのために頑張る」以上に強力なエンジンとなる。

 (たとえば、
 集団行動が苦手な私は企業に就職する未来が怖かった。
 故に大学生の頃からフリーランスで稼げるかどうかが
 死活問題であり、焦りを燃料に頑張り続けて今に至る)。

 人は、それぞれ違う。
 それ故に何が幸せかも十人十色。
 「適材適所」というものがある。

 自分が心地よいと思う環境を探し出し、
 自分をそこに置いてあげることが最も大事。
 そのためにはまず自分の性質を見抜くこと。

 成長過程においては
 人生の選択肢を
 増やしていくことが大事だが、
 「迷えるアラサー」へと
 突入したらまずはいったん、
 選択肢を一つずつ吟味して
 減らしていく作業も必要だ。

 迷いを減らすことで
 視界がクリアになる。
 目指すべき「的」を絞れ!

 ドラマの主人公たちの中でいえば、秘書の花音。
社長のマネージメントをそつなくこなすが、愛人との密会場所のホテルの予約までさせられることにうんざりし「早くこんな仕事はやめて子育てがしたい」と言い切る。迷える主人公たちの中で、彼女のマインドセットは誰より堅い。

「わたしはみんなみたいに
バリバリ稼げるわけでもないし。
もう結婚にかけるしかないの」

「サッカー部のマネージャーもしていたし、
マネージメント能力には自信があるので
家庭を支えることには向いていると思うんです」

自分の苦手と得意を理解した上で、
花音は婚活へとその一歩を踏み出した。
私は彼女の判断と行動にエールを送る!

だって、行動を起こしたことで初めて人生は動き始めるから。
もちろん、理想どおりにすべてのコトが運ぶとは限らない。
それは不幸? いや、そこが人生の「おもしろポイント」だ。

大真面目に人生設計図を描き、
その通りに行動した果てに、
リアル人生が
そこからどう外れてゆくのかを
面白がる余裕を持つことが最重要。 

もちろん、この「域」に到達するには修行がいる。
それこそ20代と30代を丸々使って、時に心が傷だらけになりながらも身体張って生きて初めて、やっとその感覚が自分へと舞い降りてくる感じ。

だから、まずは挑戦すること。
人生にぶん殴られに行くこと。

 自己ベストを尽くしても得られないモノがこの世にはたくさんある、と身をもって知って初めて肩から力が抜けてゆく。これは実はすごく良いこと。
 自分ではコントロールの効かない“神の領域”ってモノがあることに、イヤでも気づく機会は年々増えてくる。
 結婚における「ご縁」だってその一つ。
 ―――なら、はじめから頑張らない? 得られなかったら傷つくから最初から欲しがることを止める? 違う。
 全力で頑張った結果として得られないことで、初めてその運命を受け入れる器ができるように思う。「やれることは全てやった」と言い切れる時、後悔というものは残らない。残るのは、意外かもしれないけれど「やることやった自分」に対する「自信」だったりもする。

 想像してみて欲しい。

全力を尽くした結果、
リングで負けて血塗れの悔し泣き。
だけど爽やかに現実を受け入れて
人生と握手をするスポーツマンを。

 魅了されない人などいないでしょう? そう。どこまでも燃えて全力を尽くし、今度はどこまでも冷静にその結果を受け入れると、「人間としての魅力が爆上がりする」というボーナス付き。
 ――――と、あえて理想通りにはいかなかった場合について書いたけれど、全力を尽くしたことで欲しいものを手に入れる可能性は高いのだ。欲しいものに自ら手を伸ばすことなく、常に受け身の姿勢で生きているよりずっとずっと! 

ならば、やっぱり
挑戦して損はない。
失うものなど何もない。

 さ。とにかくスマホのメモでもいいから、
ここからの自分の人生設計図を書いてみて?

 ドラマを観るのもエッセイを読むのもエンタメっちゃエンタメだけど、人生を丸ごと掛けた自分のライフプランを練ること以上のエンタメはないと私は思っている。

 嗚呼、思い出すよ、ラスベガス。

 バカラ会場のヒリヒリした空気が私はとっても好きだった。当時20代だった私には掛け金500ドルが精一杯だったし、すべて5分で消えたけど(笑)今でも、世界中から「人生を掛けたスリル」をベガスに買いにくる大富豪たちは後を絶たないよ?  
 富を得たことでクソほど安定してしまった人生がスリルを渇望させるのだろう、と私は想像するの。

 で、
 あなたには今それができる。
 しかも家で。もちろん無料で。

 人生ゲーム。ふっ。かかってこいよ。そう思うとね、リングに上がったプレイヤーの気分になってアドレナリンが出てくるよ。
 もちろん、誰だってもれなく殴られる。痛いよ。時にはヤバイよ。エグいよ。
 でも、人生にぶん殴られるタイミングは、早ければ早いほどいい。若さをバネに光の速さで這い上がれるし、セカンドチャンス、サードチャンス、次から次へともれなく用意されている。

 体力をケチらないで、
 失敗をビビらないで、
 どんどん挑戦していこ!!  

◆次回予告◆ 1/28更新
#02「セックスレスのまま結婚してもいいのか問題」


profile_LiLy
作家。81年生まれ。神奈川県出身。蠍座。N.Y.、フロリダでの海外生活を経て上智大学卒。著作多数。Instagram_@lilylilylilycom


◆「ABEMA」オリジナルシリーズ新作ドラマ

『 30までにとうるさくて 』番組概要


1月13日(木)夜10時スタート(毎週木曜日夜10時~全8話)
企画・プロデュース:藤野良太
脚本:山田由梨
演出:金井紘
出演:さとうほなみ・山崎紘菜・佐藤玲・石橋菜津美

<あらすじ>
「30歳までに結婚しないと…って焦るけど、なんで?」「子供を産むなら年齢は気にした方が良い?」 「29歳、私たちこのままでいいのかな」など、“30歳”という節目の年齢を意識する女性ならきっと誰もが一度は感じたことがある悩みや焦り、怒りを抱えながらも、自分たちの意思で乗り越えていく姿を、ユーモラスかつ痛烈にオリジナルストーリーで描く、現代の東京を生き抜く29歳独身女性たちの恋、キャリア、性、友情の物語。


番組の視聴はこちらから♡

illustration_ekore(@igari_shinobu & @hello_chiharu)
edit_SWEET WEB
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