ABEMA新オリジナルドラマ『30までにとうるさくて』と連動し、sweetWEBでは、ドラマの脚本協力を担当した大人気作家LiLyさんによる短期連載を掲載中。なんといよいよ今夜で最終回です。悩みもがきながらも、たくましく日々を生きる全ての女性の人生に、幸あれ♡


『30までにと “自分の声が” うるさくて』

      by LiLy

#07
「30までに! って色々悩んでた私たちってなんなんだろ(笑)」

 

 「子持ちはノー」と
 高村を結婚対象から
 “光の速さで”外したのは、
 29歳の花音だった。

 「あんなしっかり者の
 可愛い娘ができるなんて
 私めっちゃラッキーじゃない??」

 こちらは、30歳になった
 同一人物(花音)による発言である。

 適齢期の女性の弱点が「焦り」ならば、
 強みは「切り替えの速さ」だろう。(笑)

 もちろん、「私が高村さんを稼げるようにしてあげるの!!」というマインドセットに至るまでには花音にも悩んで考える時間が必要だった。が、それもまた「超」がつくほど短期間。
 「やっぱり私は彼が好き!」という想いがベースにあったのは間違いないけれど、恋愛感情の「勢い」だけに任せた判断ではないところが、なんとも花音らしくて頼もしい。
 起業実績もある高村にはこれからも稼ぐ能力があるという冷静なジャッジと、中学3年生の娘との親子関係も理想的であり(そこからも彼らの人間性がわかる)花音自身も娘と仲良くなれたこと=「この三人ならばきっと良いチーム(家族)になれる!」という「確信」が花音の背中を押した。
 なんと、花音からのプロポーズである! 

 ホットな感情の「勢い」と
 クールな思考の「GOサイン」が
 ピタリと重なり合ったとき=
 最適な「決断&行動」タイミング! 

 多くの人が理想とする「恋愛結婚」の
 「恋と条件バランス」もここにアリ。
 心(感情)と頭(思考)がセットで
 「GO」を出しているところにこそ、
 「自分の意思」というものは宿るのだ。

 そして、「ほんとうの意味での幸せ」とは、今いる場所に自分の意思でいるのかどうか、でほぼ決まる。

 たとえば、周りのみんなが行ったほうがいいと言うから行った大学で、単位を取るためだけになんとなく勉強している人と、自らの意思で明確な目的を持って学んでいる人とでは、同じ場所で同じことをしているようでいて、その時間の充実度は全く違う。

 自分の「意思」のないところに「輝き」はない。
 他人の目に「幸せそう」にうつる道を選んだところで、その中にいる自分がハッピーでなければ全く意味がない。

 「彼氏さんの気持ちは彼氏さんにしかわからないけど、遥さん自身が、どうしたいか、なんじゃないですか?」

 遥の浮気を許して家に戻ってきた婚約者:奏多との結婚を間近に控えながらも、そのような相談をまた別のイケメンにしてしまう、というある意味“ブレない”遥ではあったが、肝心のところにブレがあった。

 休職中の29歳で、いつかは子供も欲しくって。
 戻ってきてくれた“優しい”婚約者とは、
 浮気&破局という刺激を挟んだことで(?)
 長年のレスの悩みも解消“は”されて、
 再プロポーズまでしてもらった。
 断るなんてバカだよね? 
 「頭」の中で激しく点滅する
 GOサインに流され続けて
 イエスと言ったものの、
 「心」のモヤが日に日に色濃くなってゆく。

 自分がどうしたいか、がわからない。つまり、
 この結婚の中に自分の「意思」が見つからない。

 「私ね、30までに結婚しなきゃとか、
 キャリアも諦めずにがんばらなきゃとか、
 いつも周りに合わせてばっかりで、
 自分と……自分の気持ちに
 ちゃんと向き合ってなかった。
 でもそれじゃダメなんだよ。
 どうしたいか、何がしたいのか、
 それを自分で見つけない限り
 幸せになんてなれない……」

 みんなの前でウェディングドレスを試着していた遥は、自分の中にあった「心」のほうの違和感がピークを迎えて、その場でスパーク! 「やっぱり結婚はできない」と、泣きながら奏多に想いを告白した。
 「奏多くんかわいそう……」と友人たちからも非難されまくりの(ギリギリの)タイミングではあったけど、遥はラスト、自分の意思で「結婚」ではなく「破局」を選んだのだ。
 仕事も結婚も恋人も失った遥の、言い換えれば、もう失うものなど何もないほどに自由な遥の「意思のある決断」ははやかった。

 30歳での海外留学! 
 行き先はデンマーク。

 もちろん、ここはドラマの構成上、ヒロインの遥が“その後を考える時間”に数年を使うとなると8話では〆らない/物語を終われない(笑)。故に「即ネクストアクション!」へと繋がっているところもあるけれど、

 「後ろから追いかけ続けてくる
 不安に追いつかれないほどの
 スピード」で「前へと走ること」▶︎
 時には効果的なサバイバルテクニック。

 ただ、これもまたその人の状況や性質によるところが大きいので、全ての人に当てはまるとは言えない。たとえば「今は休むことが仕事だ!」と決めて実家に戻るという選択だって、とても立派な「意思のある決断」だ。
 (10代より20代、20代より30代の方が生きるのが気持ち的にはラクになる、とはよく言われることだけど、要はコレ、自分自身の本質を知っていくことで自分の扱い方法がわかってくる、という意味だと思う。
 得意に不得意。向き不向き。これらが良くも悪くもごまかしが効かないくらい明確になってくるわけだから、「これが自分か!」とひとまず受け入れることで、対処法も見えやすくなってくる。なにもかもがしんどい時は、私はこうすると心が落ち着きやすい、とかね。目指すところは「自分のプロ」!)

 困った!ってなった時に、
 こうなればいいのに!って
 思うでしょ?
 そこに「ヒント」がある。

 先輩のこの言葉がずっと頭の中にあったという遥は、「メンタルケアが日本でももっと浸透するといいのに!」と思ったところから、「適応障害について、人の心理について勉強したい」という目的を探り出し、彼女にとっての理想的な学校をデンマークに見つけたのだ。
 そして一年後、留学先から一時帰国した遥の口からは「セックスセラピスト」という明確な職業名が飛び出した。
 「これが自分の将来につながるかどうかはわからないけれど」と言いながらも「学びに行く」というアクションを起こしたことが、「自分がやりたいことを見つける」ところへと繋がった。

 今のピンチは、
 自分の想像をも越えた
 真新しいチャンスを連れてくる。

 もし遥に、婚約者とのレスで悩んだ過去がなかったら、目指すどころか出会うこともなかった職業=セックスセラピストだったはず。

 出会いは、
 どこに落ちているかわからない。

 ただ、ぼんやりと同じような日々を繰り返しているだけで突然チャンスが舞い降りてくるほど甘くないのもまた事実。

 「意思のある行動」のみ、が未来を切り開く。
 遥の場合のそれらは、「破局」「退職」「留学」。

 では、きちんと計画を立てて意思を持った行動を積み重ねていけば、思い描いていた通りの未来が手に入るのか? 誰もが知っているその答えはノー。でも、そこにこそ私は、「人生の面白さ」を見る。

 どんなに計画を立てて
 動いたところで、
 たったの1年後すら未知なる世界。

 恋愛にも結婚にも全く興味がなく、ずっと一人で生きていこうと思っていた経営者の恭子は、男の子のママになった(精子ドナー探しで自分自身が苦労したことから、そこにヒントを得て、同じような悩みを持つ人たちのサポートができるような新会社も立ち上げることに!)。
 年収二千万円を稼ぐ男性と結婚して専業主婦を目指していた花音は、バツイチ子持ちの男性をパートナーに、彼をサポートするために自分も仕事をすることにした。
 詩は、同性愛者であることをカミングアウトできずにいた恋人:真琴と晴れてパートナーシップ制度をつかって公のカップルとなり同棲中。一方、バリキャリで婚約者がいた遥は、シングルになりデンマークに留学中というわけだ。

 感想:まさかここに着地するとはねって
 自分で自分にビックリできるって、最高。

 私は、「自分で立てた人生プランがどんな角度で逸れてゆくかが見ものだな」って思って生きているところがある。そう、まるで、他人事みたいに。
 でも、そんなふうに受け身の姿勢で結果を楽しみにするのは、最後の1%の時期にだけって決めている。
 その時の自分が欲しいものを明確にして、そのために「攻めの姿勢」で、感情と脳味噌をフル稼働して、動いて暴れて頑張って、「よっしゃ、やり切った、あとは結果待ち」って状態になったところで、突然「人生の傍観者」へと“キャラ変”するってやり方だ。
 自己ベストを尽くした自分に対しての後悔は残らないし、結果というものはもう、自分でコントロールできる領域にはないことも多いから。
 そしてこのマインドセットも、人生二度目の流産で入院していた深夜に、あまりにも辛い現実を直視したら壊れそう……ってところまで追い込まれたことで身についたものだ。人生を嫌いになりそうなほどに哀しかった出来事は、その後の人生に役立つ新しい気づきを私にくれた。

 目標を追いかける時は
 「主観」で熱く生きるけど、
 結果待ちのステージからは、
 現実から視線を数キロ離して「客観視」。

 ―――――じゃなきゃ、メンタルが保たない。

 恋愛や結婚、妊娠や出産など、センシティブな領域にあることほどに「ご縁ありき」のものでもあるから。だけど、それこそが「運命」って呼ばれるものなんだから、それでいいのだ。

 神様にジャッジを委ねること
 を覚えると、自分の負担は軽くもなる。

 それに、最初の数ページを読んだだけで結末が想像できる小説って、面白いだろうか? 自分の想像した通りの展開をみせて終わったドラマって、つまらなくないだろうか? 小説やドラマなら、放り投げることができる。
 でも、生きている限り“自分ごと”である自分の人生には、どうか面白くあって欲しいと願う。たとえ、その流れが自分の気に食わないものであったとしても「ほー、そうきたか!」って、まるで本を読んでいる気分で自分の人生に対して言い放っていたい。

 このドラマは、4人の先輩であるバーのオーナー:みちるの“3回目の”結婚式で始まり、離婚式で幕を閉じた。
 今は結婚式をやらないカップルも多いというのに、たった1年の結婚(しかも三回目)の前後に盛大なセレモニーをくっつけたみちる、人生を愉しむ天才か(笑)。

 「今日から私たち夫婦は、
 それぞれの道を歩んでいきます。
 人生はまだまだ長い、何度でもやり直せる。
 ここからが新たなスタートです!!」
 みちるはそう宣言すると、
 (元)夫と手を取り合って
 満遍の笑みで結婚指輪を叩き割った!!

 それを見た
 遥の心からの感想▶︎
 「…なんか、30までに
 って色々悩んでた
 私たちって何なんだろう…(笑)」

 や、ほんとにね(笑)と誰もが思うシーンではあるのだが、全く同じ場面を1年前の4人が目撃していたとしても、こんなふうには笑えなかったようにも思うのだ。

 ラストシーンに心からの笑顔を
 見せていた4人はまさに
 “呪い明けの30歳”。

 「30までに」は
 自分で自分にかけている一種の呪い。
 実際に30歳になって、
 自分の目的がなんとなくでも掴めてくると、
 その呪いはパアッと解けてゆく。
 と、同時に初めて気づくのだ。
 30歳以降の人生が、想像以上に
「クソ長い」ということに(笑)。
 
 「30までに」と思えば思うほど
 人生に対して”近視“になるが、
 実は人生は「長距離マラソン」。

 ―――実はこれ、
 連載のイントロダクションに書いた
 究極とも言える質問▶︎
 恋愛もセックスも結婚も子供も仕事も金も、
 すべてを手に入れることはできるのか?!  
 ▶︎の答えへと繋がる。
 
 ▶︎▶︎▶︎人生の「時期」で分ければ「可能」。

 たとえば、最近私が出会った60代の女性の人生はこのように“時期分け”されていたそうだ。
 30代は「恋愛」しながら「仕事」をしていたが、恋をすると精神的に乱れることに気づいたために40代からは、恋愛ではなく「セックス」を楽しむことに決めて「仕事」に集中し、50代で取締役に昇格して「リッチ」になり、なんと60代で「結婚」!(彼女は初婚、旦那様の方は再婚で、だけど同じく社長で同年代。白無垢と袴姿の結婚写真を見せてもらったけれど、本当にお似合いのカップルでうっとりしてしまった)。
 「夫には、亡くなった前の奥様との間にお子さんがいて、お孫さんもいて、そのような経験が私はできなかったなぁ、素敵だなぁ、いいなぁとは思うけれど、「恋愛」も「仕事」も「セックス」も時期を分けることでいっぱい楽しんできて、今は人生初めての「新婚生活」を謳歌しているの」と幸せそうにアハハー♡と笑った彼女が放った眩しさ、想像してみて。(サングラス必須案件)。
 それに、もし欲しいもの全てを30歳ピンポイントでオールゲットしたとしても、1日には24時間しかない。
 最愛なるダーリンと刺激的なセックスをして? 胸が高鳴るような彼への恋はいつまでも続いていて? 彼との愛の結晶である乳飲み子を必死に育てながら? バリバリ仕事にも集中するの? 同じ日に?? え? それでもってこのルーティンをエンドレスリピートしながら永遠を目指すの?? これは、幸せというよりただの忙殺であり、体力的にも色々と不可能(笑)。

 だから、ね。
 「人生、意外と長い」は朗報だ。

 偉そうに色々と書いてきた私自身、
 まだまだ手探りで迷いながら生きている。

 ザッと「今の私のカオス」の詳細をお話しすると、この最終回の原稿を半分くらい書いたところでスマホのアラームが鳴り、大慌てで(もちろんスッピンで)息子の小学校の卒業イベント(式ではない)に出席し、そこでなんと中学校の制服のオーダー期限がとっくに過ぎていることを初めて知り、寿命が縮むほどの衝撃と焦りの中、テイラーに猛ダッシュしてなんとか間に合わせたところで1日分の力が尽きて、朝からまたこの原稿に戻ってきて書いているが、1時間後には塾の送迎時刻を知らせるアラームが鳴るために、今も現在進行形で時計と睨めっこしながら焦っているという「ピンチ具合」だ(笑泣)。
 その時期ごとに、種類が変わるだけで焦りはある。迷いもあるし、悩みもある。(昨夜の私は、母親としての自信を喪失してお風呂でちょっと泣いた)。
 「30歳とは」なんて文章を書きながらも、私自身はまだ「40歳」という自分の年齢の数字に慣れることができなくて、ただの数字に自分のテンションを引きずり落とされている感も否めない(笑)。

 ――――そのように、まだまだ修行の身である私だけど、「29歳からの30代」は最近通り抜けたばかりの“十年トンネル”だったので、記憶もまだまだ鮮明で、このタイミングで“妹たち”へのメッセージを文章にできたことは幸運でした。
 そして、「40代以降が未知すぎて不安」な私は来月から、人生の先輩たちに生き方のヒントをもらいにいく対談連載を(別媒体になりますが)始めます。(ね? ピンチにこそ次の仕事のヒントあり)。
 30代は、若いです。(40代も若いのだけど今はまだあまりそうは思えない)。でも、30代は事実として若いです(2度目)。

 30代を生きるにあたって、
 1日たりとも
 自分のことをババアだと思うな。
 まだ若いのに
 ババアとして過ごすなんて、
 もったいないにもほどがある!!!
 ――――――――「UNDER40/NOBBA」。

 それだけは絶対に伝えたいと思ったら、
 暗号のようなラストになってしまいましたが、
 最後までお付き合いくださって、どうもありがとうございました。
 みなさまがこれからも身体を張った冒険(人生)を楽しめますよう、
 ここから願っています。では、またどこかですぐにでも♡ LiLy

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profile_LiLy
作家。81年生まれ。神奈川県出身。蠍座。N.Y.、フロリダでの海外生活を経て上智大学卒。著作多数。Instagram_@lilylilylilycom


◆「ABEMA」オリジナルシリーズ新作ドラマ

『 30までにとうるさくて 』番組概要


毎週 夜10時スタート(全8話)
企画・プロデュース:藤野良太
脚本:山田由梨
演出:金井紘
出演:さとうほなみ・山崎紘菜・佐藤玲・石橋菜津美

<あらすじ>
「30歳までに結婚しないと…って焦るけど、なんで?」「子供を産むなら年齢は気にした方が良い?」 「29歳、私たちこのままでいいのかな」など、“30歳”という節目の年齢を意識する女性ならきっと誰もが一度は感じたことがある悩みや焦り、怒りを抱えながらも、自分たちの意思で乗り越えていく姿を、ユーモラスかつ痛烈にオリジナルストーリーで描く、現代の東京を生き抜く29歳独身女性たちの恋、キャリア、性、友情の物語。


番組の視聴はこちらから♡

illustration_ekore(@igari_shinobu & @hello_chiharu)
edit_MEI SONE(SWEET WEB)
※文章・画像の無断転載はご遠慮ください