【This Month’s 4 Movies】

今月要チェックの映画を4本ご紹介! 写真を見てインスピレーションで選んでみてね。


『ザ・ホエール』

体重272キロの巨漢の苦悩を圧倒的な演技で体現したB・フレイザーが、アカデミー賞主演男優賞を受賞した魂救済のドラマ。

恋人を失った悲しみと娘を捨てた罪悪感が、主人公の巨大化した肉体の隅々まで詰まっているようで、痛々しく、重い。

父を恨む娘が大人達の心をかき乱しながら導くラストの後味は悪くない。宗教ネタをちりばめたD・アロノフスキー監督のスリリングな演出もおみごと。

story:同性の恋人を亡くしたショックで過食症になったチャーリー(B・フレイザー)の体重は272キロに。恋人の妹で看護師リズ(H・チャウ)から死期が近いことを知らされた彼は、8年前に捨てた娘(S・シンク)との関係を修復しようとするが……。
監督:ダーレン・アロノフスキー/出演:ブレンダン・フレイザー、セイディー・シンク、ホン・チャウ ほか/配給:ギャガ/公開:現在、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー中

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『search/#サーチ2』

パソコンの画面上だけで物語が展開する『search/サーチ』(18)の続編となれば、急速に進化した現在のデジタル社会を反映しているのは当然。

旅行先で姿を消した母の行方を捜索する娘が、多種多様なデジタルツールをサクサクと使いこなしていく知恵と知識に驚愕。

暴かれる真相がじつに人間臭いのも怖いけれど、同時に味わうのはすでに“個人の秘密はありえない”という実感。怖い……。

story:LAの高校生ジューン(S・リード)は、南米・コロンビアを旅行中に消息を絶った母グレイス(N・ロング)の行方をサイトやアプリを駆使して捜索。そこで明らかになっていくのは今まで知らなかった母親の過去だった。
監督:ウィル・メリック、ニック・ジョンソン/出演:ストーム・リード ほか/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/公開:4月14日より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー


『EO イーオー』


主演は、EOという名のロバ。サーカス団から連れ出され、善人や悪人に出会いながら流浪するEOの旅路。

自然や人間の世界を淡々と俯瞰するロバ視点は、さながら“我が輩はロバである”の実写版。EOの物腰は純粋で無邪気、愁いを帯びた瞳は愛らしく、けなげで可愛い!

監督はカンヌ国際映画祭受賞者の常連であるイエジー・スコリモフスキ。物言わぬ動物を主人公にした大胆で鮮烈な作品。

story:灰色のロバ、EOは、心優しきパフォーマー、カサンドラ(S・ドルジマルス力)とサーカス団で生活していたが、動物愛護団体のデモで連れ出される。放浪の旅の中、司祭ヴィトー(L・ズルゾロ)、夫に先立たれた伯爵夫人(I・ユペール)らと出会う。
監督:イエジー・スコリモフスキ/出演:タコ、オラほか(EO役ロバ)、イザベル・ユペール、サンドラ・ドルジマルスカ ほか/配給:ファインフィルムズ/公開:5月5日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかで全国ロードショー

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『セールス・ガールの考現学』


モンゴル映画だけれど、舞台は草原でもパオでもない。主人公はアダルトグッズ・ショップでアルバイトする大学生女子。

内気で無気力な彼女と、ショップオーナーであるミステリアスで奔放な旧ソ連系中年女性との不思議な友情を経て、性の肯定と解放が爽やかに描かれる。

都市化が進むモンゴルの今のリアルを切り取ったキュートで奇妙な成長物語は、モンゴル映画のイメージを鮮やかに覆してくれる。

story:大学生のサロール(B・バヤルジャルガル)は、怪我をした同級生の代理でアダルトグッズ・ショップで働くことに。一日の終わりには、ショップオーナーのカティア(E・オィドブジャムツ)という謎多き女性に売上金を届けに通う。
監督・脚本・プロデューサー:センゲドルジ・ジャンチブドルジ/出演:バヤルツェツェグ・バヤルジャルガルほか/配給:ザジフィルムズ/公開:4月28日より、新宿シネマカリテほかで全国順次ロードショー

© 2021 Sengedorj Tushee, Nomadia Pictures
text_YUKO KANEKO, HAZUKI TOGO
web edit_KAREN MIYAZAKI[SWEETWEB]
※記事の内容はsweet2023年5月号のものになります
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