La nuit où Laurier Gaudreault
s’est réveillé
STAR CHANNEL EX 『ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと』

監督作『Mommy/マミー』、『たかが世界の終わり』がカンヌ国際映画祭受賞作として知られ、“カンヌの申し子”の異名を持つ天才、カナダ出身の映画監督&俳優グザヴィエ・ドラン。人間の本質をえぐる話題作を発表し続けてきた彼が、TVドラマに初挑戦したと聞けば、興味をそそられずにはい
られない。

物語は、母の死を機に30年前の事件にかき乱される家族が、過去の嘘と真実に対峙する様子を描いた究極のサスペンス。伏線がちりばめられた前半には不穏な質感が漂い、ホラーやスリラー風の演出にゾクゾクさせられる場面もある。ドランらしい凝ったカメラワークと鮮烈な色彩の映像美に、映画音楽界巨匠、ハンス・ジマーの秀逸なサントラが加わり、スクリーンには終始ひりひりするような緊迫感が続く。映画よりも長い5話シリーズだが、ついに秘密が明かされるラスト15分まで一時も目が離せない構成が巧みで、観終えるともう一度初めから見たくなる綿密で濃厚な約5時間だ。

愛憎渦巻く家族関係の歪みは、ドランが常々描くテーマ。本作でも、死して家族を苦しめる母の呪縛とそれぞれが問題を抱える4人きょうだいの崩壊した心が描かれ、逃れたくても逃れられない家族間のモヤモヤした感情やトラウマが鋭くあぶり出される。そして、ところどころ何気なく差し込まれるのは、家族同士にしか分からないぬくもりを感じる愛のシーン。誰もが心の奥に持つ痛い部分をつつかれるような映像体験でありながら、ドラン特有のアンビバレントな家族観のせいか、後味はとても温かい。複雑な感情の渦に心をゆさぶられる、忘れられない一作だ。

『ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと』
story:1991年、ケベック州郊外。ジュリアン(E・P-ボードロ)と妹のミレイユ(J・ルメー)、隣家ゴドロー家のロリエ(P・G・ラジョイ)は仲よし3人組だったが、ある夜の事件を境に一変。ミレイユは秘密を抱えたまま町を離れた。約30年後、母マド(A・ドルヴァル)が危篤になり、きょうだいが再び集まることになる。
製作・監督・脚本・出演:グザヴィエ・ドラン/出演:ジュリー・ルブレトン、パトリック・イヴォン、ジャスミン・ルメー、イライジャ・パトリス=ボードロ、ピエール・ガブリエル・ラジョイ、アンヌ・ドルヴァル ほか/
Amazon Prime Video「スターチャンネル EX」にて配信中

© Fred Gervais

NETFLIX 『キル・ボクスン』


思春期の娘を育てるシングルマザーの裏の顔は、やんちゃな無敵の殺し屋。そんな斬新なママさんヒーロー像を演じるのは、“カンヌの女王”と呼ばれる名優チョン・ドヨン。殺し屋達が破天荒に暴れまくる極上のアクションはカタルシスが満載。
監督:ビョン・ソンヒョン/出演:チョン・ドヨン、ソル・ギョング、ク・ギョファン ほか/Netflixにて独占配信中

© Netflix

NETFLIX 『模倣犯』


1990年代の台北を舞台に連続猟奇殺人犯を追う検察官達を描いたミステリー超大作。日本でも映画&ドラマ化された人気小説の原作者・宮部みゆきも認める高クオリティーの台湾版ドラマ。重厚で繊細な描写は見応えたっぷり。
監督:チャン・ロンジー、チャン・ハンルーー/出演:ウー・カンレン、アリス・クー ほか/Netflixにて独占配信中

© Netflix
text_Masamichi Yoshihiro,HAZUKI TOGO
web edit_KAREN MIYAZAKI[SWEETWEB]
※記事の内容はsweet2023年4月号のものになります
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