アパレルブランドHer lip toを立ち上げたのち、2020年1月に株式会社heart relationを自ら創業した小嶋陽菜さん。自分の夢を叶えていく小嶋陽菜さんが語る起業とは?
小嶋陽菜さんの起業に必要なのは「熱量」
小嶋陽菜
PROFILE
創業者/チーフクリエイティブオフィサー。17年にAKB48を卒業後、18年6月に「Her lip to」をリリース。事業規模の拡大に伴って、より事業にコミットする体制を構築するべく2020年1月に株式会社heart relationを自ら創業。
“ファンの方と交流するために私のライフスタイルを発信していきたい”
スタッフとコミュニケーションをとることが大切なので会社のイベントも定期的に開いています
小嶋さんがアパレルブランド「Her lip to」を立ち上げられたのが2018年でしたよね?
「ブランドを立ち上げたのはちょうど30歳になったタイミングでした。
その前にAKB48として12年間活動してきたのですが、30歳になる前に一度リセットして何か新しいことを始めたいなと考えて29歳で卒業したんですね。
そのときは何をするのか具体的に考えてはいなかったのですが、アイドルとしてではなく応援してくださっているファンの方と何かしらの形でつながっていたいなと考えていたんです。
その中でみなさんが興味を持ってくださっている私のライフスタイルを発信していきたいと思ったのが始まりでした」
その2年後に起業されるまでの経緯とは?
「ブランドを立ち上げたときは、実はブランド単体ではなくファンの方とコミュニケーションが取れるアプリを作ろうと思っていたんです。
今はSNSやYouTubeで発信していますが、そのころは自分のライフスタイルをアプリの中で紹介したり、自分が作った服を販売したりしたら面白いなと思っていて。
けれど当時はアプリは私1人で動かすには難しく、SNSのように好きなタイミングで投稿できなかったり、制作コストもネックだったため、断念したんです。
ただ、そこで販売するお洋服を作ってしまったし、作ったお洋服がとても可愛かったので、『BASE(ベイス)』というサイトで販売を始めました」
ブランド単体の運営ではなかったのですね?
「はい。アパレルブランドとしてのサポーター体制が整っていたわけでもなくて、所属事務所のスタッフ数名と私という小さい規模でスタートしました。
そのころからSNSの影響は大きくて発信することでお客様からのブランドに関するお問い合わせも増えてきて。
スタッフも満身創痍の状態でこのままだと維持していくのが難しいし、何よりお客様の期待に応えるためにまずは組織を作ることが必要だと思ったのが会社設立のきっかけになりました」
ということは起業を決めて最初に行ったのは仲間を集めることだったと?
「まずは同じ熱量を持って事業に携わってくれる人を探そうと思いました。
私としては、同世代で一緒に頑張ってくれる女のコとスタートアップ的な感じで働けたらいいなと思ったので、色んな方に相談して人材を探してきました」
“『カオスを楽しめる人材』を採用して他の会社ではできない体験を楽しんでもらいたい”
起業のための準備を進めていたころを振り返ってみて、こういう知識があったらスムーズだったなと思うことはありますか?
「起業する前はタレントだったので自分で結果を出すという気持ちが強かったんですね。
今振り返ると、コミュニケーションが重要だと思います。
相手が何を思っているかとか自分が何を求めているのかとか、言葉にして伝えることでビジョンを共有したり、イメージのズレをなくしたり。
感覚は人それぞれ違うので、そういったことをお互い話せる場を作ることができたらもっとスムーズだったのかなと思います」
現在も人材を募集されていますが、一緒に働く人に求めるものは?
「未経験でもいいのですが、何かに対して熱量高く取り組める人なのかどうかというのは大事にしています。
例えば『推し』があるマニア気質だったり。
自分の好きなものに時間を割いて、それについて熱く語れる人がうちの会社では活躍しています」
ビューティラインHer lip to BEAUTYも展開。ボディバームやパフュームオイルなどを提案している。
未経験でも可で、そういった熱量があれば、大きなポストに抜擢されるチャンスもあるということですよね?
「年齢や経験に関係なく『モチベーションも高いし、向いている気がするから任せてみよう』という配置をすることもあります。
今も新規の事業部を作ったり、まだまだ人材が足りていないポジションもあるので、次々と巻き起こる『カオス(混沌とした状況)を楽しめる』というのもポイントです。
他の会社ではできない経験をしてほしいと思っています」
起業したあと経営を維持していく秘訣は?
「AKB48のメンバーだった10代から20代前半に秋元先生から『自分に飽きないことが一番大事だよ』と言われたことがあって、それ以来モットーにしています。
経営についてはまだまだ勉強中ですが、自分が楽しい思えることやファンの方やお客様が喜んでくれることを日々考えて形にする。
それをお届けして期待に応えることが会社を持続させ成長へとつながるのではないかと思います。
それと同時に私自身も常にアップデートすることで、スタッフから『一緒に働きたい』と思ってもらえるような存在にインクレイブしていくことが大切だなと思っています」
“AKB48時代に経験したことや秋元 康さんの言葉が今も役立っている”
現在ではビューティやランジェリーも展開しています。ライフスタイルブランドとして今後の展望を教えてください。
「ウェルネスについて興味があり学んでいます。Her lip toのプロダクトや想いも、広い意味ではウェルネス(よりよく生きる)に繋がっていると思うので、その先に社会貢献できることがあればと考えています」
これから起業する方にアドバイスをお願いしたいのですが、起業しようと思ったらまずは何から始めればよいですか?
「私の場合は仲間集めでした。
そのためには、『一緒に働きたい』『私と何かを始めたら楽しそう』と周りの人をワクワクさせられる自分であること。
自分以上のキャリアや専門知識がある人の協力を得るには説得力を持っている自分になる努力をすることが大切かなと思います」
2022年11月よりスタートしたランジェリーブランド「ROSIER by Her lip to」。
小嶋さんが『一緒に働きたい』と思われる人であるために今、心がけていることは?
「幅広くアンテナを張って世の中の動向を察知して情報収集を怠らないこと。
あとは、女性が多く同世代や下の世代が多い会社なので自分の人格や容姿もしっかり磨くというのは心がけています」
起業してよかったと思いますか?
「そうですね、今、社員が50人を超えて少しずつ大きくなっている最中。
AKB48時代も大所帯にいましたが、卒業したあとのチャレンジで、またたくさんの仲間と仕事をするとは正直思っていなかったので、今も社員の集まりやイベントがあるたびに驚いているんですけれど(笑)。
同じ志を持って進める仲間がいる状況が人生で2回もあるというのはとてもありがたいですし、より自分も頑張ろうという原動力になっています」
2021年からは中国チームを立ち上げ、販売をスタート。今後はアジアにも拡大していく予定。
現在、スタッフさん同士のチャットなどにも目を通すなど会社全体の動きを把握するよう努めているそうですね?
「50人であれば、まだスタッフひとりひとりのことを把握できる規模。
『何が得意でどんな考えを持っているのか』に注目しつつ、コミュニケーションをとることが大切なのかなと考えています」
AKB48も同じくらいの人数でしたが、そのころにメンバーや秋元さんと過ごした時間が今にも生かされているということでしょうか?
「そうですね。AKB48はいくつかのチームに分かれているのですが、秋元先生にお会いしたとき、私のことを知ってくださっていたことにものすごく驚いたんです。
『こんなにメンバーがいるのに、なんで私のこと知っているの?』って。
『知ってくれて気にかけてくれている』ということで『頑張ろう』と思えた体験だったので、秋元先生とは立場も全く違うけれど、スタッフとはひとりひとりと向き合うようにしています」
最後にこれから起業を考えている読者にメッセージをお願いします。
「やりたいと思う情熱やトキメキが大切。
sweet読者の年代は今、やらなければいけないこともたくさんあると思うし起業するには勇気が必要。
そのなかでもそういう気持ちを持てたということがとても大切だし、1年後には気持ちが変わっているかもしれない。
だからこそ、起業したいと思えた『今』を大切にしてほしいなと思います」