おこぼれワイドショー【Yes or No?】
このゴシップ発言はアリ?ナシ?を考える社会派コラム(ウソ)。今回は、アカデミー賞授賞式の司会降板劇です。


それ、正義感なの?それともただのイチャモン?

昨年12月の初め、次回のアカデミー賞授賞式の司会に選ばれたケヴィン・ハート。彼はスタンダップコメディ出身のコメディアンで、昨年は出演作の『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』が大ヒット。めきめき存在感を強めていただけに、彼の起用は妥当だと思われていたの。彼自身もSNSを通じて超喜んでいたし、こりゃ授賞式が楽しみだわい、と思っていたら、すぐに辞退したのよね。それまたどうして?

じつは、彼が10年ほど前に、Twitter上で同性愛者に対する差別的なコメントを発していたの。ネット民の指摘でそれが発覚して、司会をオファーした映画芸術科学アカデミーは彼に対して、謝罪をして司会を引き受けるか、それともオファーを辞退するか、を迫ったのね。そしたら彼は「謝罪をパスします」とな。

これ、ちょっと勘違いしている人多いみたいなので説明。今の彼は決して同性愛差別をしているわけではないのね。ただ、過去に自分が発した言葉に対して、今は違う人になっている自分が謝ったところでどうしようもない、ということを言いたかったわけ。だから、司会を辞退したことをSNSで報告したときに、辞退の事実と、過去の心ない言葉でLGBTQコミュニティの人々を傷つけたことに謝っているの。

あのね……、人間誰だって過去があるわけで、そのときは今の常識ではアウトなことをしていると思うわけよ。それを冷戦時代の秘密警察のようにあら探しして、今の当人につきつけるのはいかがなものかと思うのよね。もちろん、性根変わらぬ人に対してはやるべきかもしれないけど、明らかに改心している仕事ぶりの人に対してはどうなのかしら。これと全く同じケースで、昨年は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の監督ジェームズ・ガンが、過去の差別的ツイートを発見されて、シリーズの監督から降板させられた、なんてこともあったじゃない。あのときも監督は過去の自分と今の自分とは別だけど、と弁明したものの、スタジオは許さなかったのよね……。

著名人に対してなんでもかんでも正義を振りかざしてしまう、歪んだ正義感の持ち主はネット世界に溢れかえっているけど、文句を言う前によく自分の胸に手を当てて考えてほしいわ。

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text_masamichi Yoshihiro
illustration_Kuro Nohara
edit_Kana Honma[vivace], FASHION BOX
(sweet2019年2月号)


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