難しい作品、役柄に挑み続ける女優の吉岡里帆さん。「乗り越えた先に大切な経験や仲間との関係性……たくさんの宝物を得ることができるから」。そこには、タフなハートをたずさえて“むきだし”で生きる26歳のまっすぐな姿がありました。もがきながら輝く彼女のココロの内とは。
RIHO’s PROFILE
よしおか・りほ/1993年1月15日生まれ。京都府出身。待機作に、東野圭吾の原作小説を実写化した映画『パラレルワールド・ラブストーリー』(5月31日公開予定)など。
この世界で生きていくにはからだも心も強くならなきゃ
降り出した雨の中、カメラの前に立ち続ける。ニコニコしながら「いける、いける!撮っちゃおー!」と彼女の明るい声が、屋内に切り替えるべきか?という現場の迷いを払拭してくれた。
「撮影、楽しかったですね。一致団結って大好きなんです。それに私、雨には強くなりましたから全然大丈夫でした(笑)。というのも、去年のドラマ(『きみが心に棲みついた』)で、真冬の夜中にずぶ濡れになりながら、走ってタクシーを追いかけるっていうシーンを延々と撮影していて、かなり鍛えられたんです。それに主演をさせていただいた連ドラが2本どちらも難しい作品で、役の弱さやダメージを私自身も受けてしまう経験もしました。
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でも振り返ってみると、パワーをつけて、スタミナをつけて、それを跳ね返すくらい笑って、前向きにやっていくっていうのが去年のテーマでもありました。父のような存在だった事務所の前社長が亡くなったことも大きかったです。自立して、強くなっていかなきゃいけない。事務所に後輩もできたから、引っ張っていけるような先輩にもなりたいですし。色んなことを含めて強くならなきゃと戦ってきた一年でした。
そのなかでも7月期でやったドラマ(『健康で文化的な最低限度の生活』)は、生活保護という難しい題材の作品だったのですが、ドラマのスタッフさんたちは人間模様を描くためには無視しちゃいけないテーマだからと立ち向かっていった。立ち向かっていく人をそばで見ると、『私も安パイじゃなくて難しいほうにチャレンジして、一緒に感動を分かち合ったり、視聴者の方に届けたい』と強く思います。
それに、難しいほうを選ぶのはしんどいけれど、今までの経験上で間違いではないって信じているから。大変だった分以上の喜びが必ずそこにはあって、乗り越えた先に見える景色もガラッと変わるんです」
「こう思われたい」その欲求は必要じゃない
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役柄と彼女自身は別物であっても、世間はどうしたってドラマのイメージを重ねる。難しい作品に取り組めば取り組むほどに。
「今は心身ともに鍛えられる年代。私と演じる役はまったくの別物ではあるけれど、気がつくと役の影響を受けている部分も少なからずあります。『きみ棲み』や『ごめん、愛してる』の撮影中は、どんどん眉毛が下がっていく現象もありました(笑)。そこで初めて、私って意外と役から影響を受けているんだなぁと改めて気づくことも。
色んな感情は主演という立場を経験させていただいたことで味わえたもの。賛否ひっくるめて『もっともっと頑張ろう』『もっともっと楽しくできるように工夫しよう』とモチベーションに変わります」
思ったように伝わらない、そんなやるせなさや葛藤とも戦っているはずなのに、どこまでも前向きでプロフェッショナル。
「パフォーマンスを受け取るのはお客さんなので、私の“こう思ってもらいたい”っていう欲求は関係ないし、次に進むのに必要なものではない気がします。むしろ次々と進化していくことのほうがこの仕事をする上で大切だと私は思うから。変わっていく努力をして、自分自身に甘えずに。目指すべき場所を見失わないように。10年、20年と自分が信じているものを見せ続けていきたいなって思うんです」