sweet誌面で映画や小説・漫画を毎号紹介している物書き・SYOさんが今月の推し映画を紹介する連載【ものかきSYOがスウィートガールに捧ぐ今月の推し映画】

 

vol.2で紹介する推し映画は安藤サクラと山田涼介が姉弟役演じたことで話題の『BAD LANDS バッド・ランズ』。

安藤サクラと山田涼介が姉弟役を演じた映画『BAD LANDS バッド・ランズ』が、9月29日から劇場公開される。

ポスタービジュアルや予告編、そして「姉弟が向かう先は“天国”か“地獄”か? 予測不能のクライムサスペンスエンタテインメント」とのキャッチコピーから匂い立つ通り、なかなかにハードボイルドなテイストの作品だ。

原田眞人監督といえば近年だと『検察側の罪人』『燃えよ剣』『ヘルドッグス』等を手掛けた方。どれも濃厚で骨太な映画で、本作も「特殊詐欺(振り込め詐欺など、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪のこと)グループ」を題材にした命がけの攻防が展開していく。

安藤サクラ演じるネリと山田涼介演じるジョーの過去はめちゃくちゃ重いし、裏社会が舞台のため出てくる人はどいつもこいつもヤバい犯罪者ばかりで、直接的な描写は少なくともバイオレンス色の強いシーンはちょいちょいある。

何より画面の圧が相当強いため、エンタメ感満載とはいえ気軽に観られる類の映画ではない。Sweetどころかbitter、いやtoughなテイストが143分全編を通して満ち満ちている。

せっかく「スウィートガールに捧ぐ」新連載が始まったのに、第2回目にしてゴリゴリすぎません?とは、正直思う(すみません!)。

ただ、これらはすべて“本気”の表れ。気軽に楽しめるライトな映画ではないかもしれないが、画面内に手抜きがないため見ごたえは十二分。

こってり美味しく、「お腹いっぱいになったな!」という満足感は保証するため、ご安心いただきたい。

冒頭から大阪を舞台にした振り込め詐欺の一部始終が展開していくのだが、綿密な計画を一糸乱れぬ連携でこなしていくテンポ感(セリフ回しも高速)、警察の気配に目を光らせる緊迫感が全開で(音楽や編集も実に効いている)、切れ味鋭いカメラワークや安藤サクラをはじめとする出演陣の熱演も相まって犯罪映画としてのツカミはばっちり。

「これは面白い映画が始まったぞ。濃い2時間半になりそうだ」というワクワク感に包まれることだろう。

その後、サイコパスな弟ジョーがネリにトラブルを持ち込み、ネリと因縁を持つ胡屋(淵上泰史)の魔の手が忍び寄ってきたことにより、状況はカオスに。ピンチを脱し、この地獄を生き抜くため、ネリは大博打を打つ――。

©2023「BAD LANDS」製作委員会

『怪物』や「ブラッシュアップライフ」など、話題作が立て続く安藤サクラの存在感は言うまでもないが、破滅的なのに魅力的という絶妙なキャラクターを体現した山田涼介が実にハマっている。

彼は2015年の映画『グラスホッパー』でキレた殺し屋を見事に演じきっており、原田監督とは沖田総司役を任された『燃えよ剣』に続くタッグとなるが、嫌われ役に映りかねないジョーを「爽やかなのに危なくて、危ないのに爽やか」というレベルまで押し上げている。

安藤と山田の芝居のマッチアップという点でも、しっかり楽しませてくれるはずだ。

 

『BAD LANDS バッド・ランズ』

©2023「BAD LANDS」製作委員会

story:<持たざる者>が<持つ者>から生きる糧を掠め取り生き延びてきたこの地で、特殊詐欺に加担するネリと弟・ジョー。二人はある夜、思いがけず“億を超える大金”を手にしてしまう。金を引き出す…ただそれだけだったはずの2人に迫る様々な巨悪。果たして、ネリとジョーはこの<危険な地>から逃れられるのか。

監督・脚本・プロデュース:原田眞人/出演:安藤サクラ、山田涼介、生瀬勝久、吉原光夫、大場泰正、淵上泰史、縄田カノン、 前田航基、鴨鈴女、山村憲之介、田原靖子、山田蟲男、伊藤公一、福重友、齋賀正和、杉林健生、永島知洋、サリngROCK、天童よしみ、江口のりこ、宇崎竜童/配給:東映、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント/公開:9 月 29 日(金)全国ロードショー

©2023「BAD LANDS」製作委員会

公式ウェブサイト:https://bad-lands-movie.jp/