3 『関心領域』

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ホロコーストの歴史を大前提として、強制収容所と壁一枚隔てた屋敷に住む収容所所長とその家族の暮らしが淡々と描かれる。平和でのどかな生活は白昼夢のように美しいが、背景に自然音のように銃声や悲鳴が流れ、虐殺シーンは一切見せずとも常に潜んでいる。そのサブリミナル演出が不気味過ぎる、世にも恐ろしいファミリードラマ。時代背景を予習して観ればより怖いけれど、そこから目を背けてはいけない。

story:1945年、アウシュビッツ強制収容所の隣で幸せに暮らす家族がいた。空は青く、美しい邸宅と妻が丹精込めて作った大きな庭からは、5人の子ども達の楽しげな声が聞こえてくる。そして、窓から見える壁の向こうでは大きな建物から煙が上がっている。

監督・脚本:ジョナサン・グレイザー/出演:クリスティアン・フリーデル、ザンドラ・ヒュラー ほか/配給:ハピネットファントム・スタジオ/公開:5月24日より、新宿ピカデリーほかにて全国順次ロードショー
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4 『ありふれた教室』

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熱血新人教師が生徒を守ろうとした行為が、空回りし雪だるま式に深刻化していく、ドイツ発の学園ドラマ。ストレス満載の空気の中、教師が次々とドツボにはまっていくストーリー展開と心理戦がスリリングでひきこまれる。問題を徹底的に調査し罰する“不寛容社会”のあやうさを暴き出し、観る者の正義感をゆさぶる語り口は挑戦的。生徒出席の職員会議など、教育先進国らしい学校システムも興味深い。

story:仕事熱心で責任感が強い若手教師カーラ(L・ベネシュ)は、中学1年生のクラスを受け持ち生徒から親しまれていた。しかし、校内で金品の盗難事件が頻発。校長が生徒に実施した抜き打ち検査をみて、カーラはその強引なやり方に疑問を抱く。

監督・脚本:イルケル・チャタク/出演:レオニー・ベネシュ、レオナルト・シュテットニッシュ、エーファ・レーバウ ほか/配給:アルバトロス・フィルム/公開:5月17日より、新宿武蔵野館ほかにて全国ロードショー
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