――本作で佐倉さんが演じられている、正義の天才メカニックガール「ロリ」は、見た目が可愛らしいゆえに、周りからの見られ方に苦しみもがいている姿が印象的でした。そんな彼女の葛藤も含めどんな風に役と向き合い演じられましたか?

ロリの設定を見たとき、最初は名前でちょっとギョッとしました。今このご時世に、この名前をこの子につける意味ってなんだろう?と思って彼女を紐解いていくと、彼女が持っている理念にとても共感できたんです。

生まれ持った可愛らしい容姿だったり、ピンクが好きという趣味だったり、そういうものって本来絶対に誰にも否定されるべきではないし、否定される筋合いもない。それは誰もが自由に持っていい当たり前の権利だと思うんです。

でも、そういったものを“消費”しようとする人ってやっぱりいて、否定してきたり、偏見やレッテルを貼り付けてきたりする。そういう中で、「ありのままの自分でいたい」「ありのままの自分でいることが好き」「でも、それによって傷つけられる理由なんてどこにもない」と、しっかり主張していくロリという女の子の姿が、とてもかっこよく見えたんですよね。

これはいろんな「戦っている人たち」に観てほしいし、もしかしたら、戦いの中でずっとモヤモヤを抱えていて、うまく言葉にできないでいる人たちにとって、ロリがそれを代わりに言語化して、届けてくれるんじゃないかと感じています。

 

――ロリの感情に寄り添う中で、ご自身と重なる部分や共感したところはありますか?

今、私が仕事にしている“表現”という部分って、基本的に「願い」なんですよね。伝わるかどうかはわからないけれど、自分の思想や、考えていること、主張、そういったものを“表現”という形にして誰かに届けたい。

でも、それを100パーセント理解してもらうことってとても難しくて、多分ほとんど不可能に近いと思うんです。それでも少しでも「1パーセントでも共感してほしい」「誰かに届いてほしい」という、そういう“ほしい”という願いを込めて発信していることが、ほとんどだと思っていて。

だからロリが持つその“ほしい”という願いにはとても共感できたし、共感したうえで「危うさ」も感じました。

「こう思ってほしい」「こう見られたい」と願うことは自由だと思っているのですが、それに対して自分が努力をしていないと、それってものすごく“エゴ”になるんですよね。だから時々、自分に対してもそうだし、他の誰かを見ていても、「そう思われたいんだったら、もう少しそう思われるような努力をしないと」と思うことがあります。

分かってほしいという気持ちは、とても難しい。だからこそ、ロリの考えていることには考えさせられる部分が多かったし、彼女はそれに対して“努力を怠らない人”。そこが素敵だなと思ったし、かっこいいなと感じました。

――この世の中だからこそ刺さるセリフがたくさんありましたね。

昔から「可愛い女の子が、可愛いだけじゃない」という主張をしている作品って、確かにあったと思うんですけど。ここまで直接的にセリフとして表現している作品ってあったかな?と思って。かなり刺さりましたね。

――アニメーションだと“お顔が可愛い”っていうのがデフォルトになっているようなところがあると思うのですが、それを明確に「言葉」にしているのが、すごく新鮮に感じました。

アニメ業界って、表現の特性上どうしてもルッキズムに対しては脆いというか……。表現する側も、受け取る側も、そこにあまり踏み込まない傾向があったと思うんです。

でも本作は、結構がっつりとそこに踏み込んでいて。今だからこそこの表現をアニメでやろうと思った方が業界の中にいたんだなと思ったら、ちょっと嬉しい気持ちにもなりました。

声優の佐倉綾音