――本作は人々からの信頼によってヒーローの能力が決まる世界ですが、佐倉さんご自身は信頼を得るためにされている努力などはあるのでしょうか?

ありますね。ほぼほぼ仕事って信頼がすべてというか……すべてとまではいかなくても、9割くらいはそうだなと感じています。

社会に出るまでは、10割が実力だと思っていた節があったのですが、いざ出てみたら全然そんなことはなくて。
「なんでこの人ってずっと仕事が途切れないんだろう?」と外側から見ていると分からなかった部分が、内側に入ってみると、信頼の積み重ねだったり、仕事に対するスピード感や説得力だったり……そういうものをちゃんと持っている人が結構な割合でいることに気づいたんですよね。

仕事ってどう考えても人間関係と切り離せない部分がほとんどなので、信頼関係や人間関係の部分で足を引っ張られないようにしたいなと、自分自身でも思っています。

実力だったり、自分の力を発揮する場面だったり、求められているものをきちんと出していく、という部分で、信頼や人間関係がマイナスにならないようにすること。それは大切にしていることの1つですね。

 

――逆に、佐倉さんが心から信頼できる人とはどういう人ですか?

まず心から私を信頼してくれようとする人、ですかね。

感情とかそういうものって、わりと“等価交換”だと思っていて。そういう意味では、私はズルいしちょっと人間不信気味なところもあり、自分から全部先に出して自己開示することが苦手で。どちらかというと、相手がどれくらい自己開示してくれるのかな?とうかがってから自分の開き方を決めるタイプなんです。そんな生き方をしていると、同じような人に出会う機会も多くて、そういう人のほうが気が合ったりすることもあります。「どこまで見せてくれる?」みたいなやり取りをする過程や時間も、実はけっこう好きなんですよね。そういう人のほうが、結果的に後々、強い信頼感で結ばれることが多いかもしれません。

――大切にしてくれる人を、大切にしたい?

そうですね。あと、シンプルに“血のつながり”というものも大事にしていて。理屈では説明できない、家族との絆みたいなものはかなり信頼しています。家族には無条件に全部自分のことを話したりもしてしまいますね。

 

――佐倉さんご自身は声優として活動されてきた中で、誰かにとってのヒーローになれたと感じた瞬間はありましたか?

わかりやすいところで言うと、誰かにお会いしてポジティブな言葉を伝えてもらえたときですね。

私は普段マイクの前でお芝居をしていて、見据えている方向はキャラクターが見ている景色で、その先にいる“お客さん”という存在を意識して芝居をしているわけではなくて。そういう“手応え”を目指して活動しているわけではないんです。

でも、キャラクターや役と必死に向き合った結果、それを受け取ってくれた誰かが「救われた」と感じてくれることがある。それがエンタメの最終目標なんじゃないかなと、そういう瞬間に思うんです。

自己満足だけで終わるんじゃなくて、誰かにちゃんと届いて、誰かの心をいろんな方向から動かす。それが私自身の目標でもあるので、それが達成できた上で誰かが「救われた」と感じてくれているのなら、本当にありがたいなと感じます。

声優の佐倉綾音