――お仕事のお話になるのですが、声優をされている中で、ターニングポイントとなった出来事はありますか?

ターニングポイントというか……19歳くらいのときに、思いっきり喉を壊してしまったことがあって。「声帯結節」という症状で、本当に1ミリも声が出なくなってしまった時期がありました。

ちょうどその頃、アニメの主役もやらせていただいていた時期だったので、本当に多くの方にご迷惑をおかけしてしまって……。2〜3週間ほどお休みをいただいたのですが、それでもすぐには治らなくて、最終的に完治するまでに1年半くらいかかりました。

その期間、自分の中でとても大きな変化があって。私は15歳でこの業界に入って、右も左もわからないまま、大人たちに導かれるままに仕事をしていて、自分の意志や気持ちがどこにあるのかもわからないまま、ただ目の前のことを必死にこなしていたような状態だったんです。

でも、声を一度失ったことで、「私、この先もこの仕事をやりたいんだ」と気づくことができた。“声優という仕事への未練”を、自覚させてくれた出来事でした。

だからそのとき初めて、心から「私は声優でいたい」と、大声で叫べるようになった感覚があって。治るまでの1年半は、毎日が本当にきつくて、現場でも自分が思うような表現がなかなかできず、いろんな方にご迷惑をおかけしながら、悔しい思いをずっと抱えていました。

でも治ってからは、その悔しさをバネに、そして“声優でいたい”という確かな気持ちを胸に、活動を続けられているなと感じています。

――自分自身を見つめ直す時間でもあったんですね。

そうですね。本当に大事な時間だったと思います。
親に初めて「私は声優でいたい」と、自分の口からちゃんと伝えられたのもそのタイミングでした。

 

――ハードな展開や生き死にが描かれる作品にも多く携わられているかと思いますが、どのように気持ちの切り替えをしていますか?

私の人生のベースって、どちらかというと「生き死に」のほうが自然で……。なんというか、ぼんやりと平和に生きていることのほうに、逆に違和感を覚えてしまうようなタイプの人生を歩んできた気がします。

だからこそ、自分の命を懸けて、人生を賭して何かに立ち向かっている人を演じているときの方がとても自然で、呼吸がしやすいなと感じますね。……物騒な感覚ですね(笑)。

逆に、日常を描いたお芝居、いわゆる日常系の作品を演じるときの方が実は気合いがいるというか。「日常って、なんだろう?」「平和って、なんだろう?」と考えこんでしまったりして(笑)。

でも、「あ、考えすぎてはいけないんだ」と自分に言い聞かせて、気持ちを切り替えて演じています。

声優の佐倉綾音