放送開始より「共感しかない」「アラサーの悩みが全部詰め込まれてる!」と話題沸騰の、ABEMA新オリジナルドラマ『30までにとうるさくて』。毎週チェック、してますか? 現代の東京を生き抜く29歳独身女性たちの恋、キャリア、性、友情の物語。“30歳”という節目の年齢を意識したことがある女性なら必ず共感できるはず。これこそ、リアル。
このドラマと連動し、sweetWEBでは、ドラマの脚本協力を担当した大人気作家LiLyさんによる短期連載を掲載中。金曜日の夜21時は、ここでしか読めない素敵なエッセイに酔いしれて♡ あなたが誰にも言えずひとりで悩んでいたことのヒントが、見つかるかも。


『30までにと “自分の声が” うるさくて』

      by LiLy

#02
「セックスレスのまま結婚してもいいのか問題」

 

どんなメイクがいいかな? 顔による。
どんな髪型がいいかな? 骨格による。
レスでも結婚してもいい? 人による。

―――と、冒頭から元も子もないことを書いてしまったけれど、この「人による」とは全てに当てはまるアンサーで、だからこそ人生設計を練ってゆく作業には孤独がつきまとう。

スリリングでロンリー。
英語にすると、
その響きは悪くない(笑)
――――――――が、

「長く付き合ったら、そりゃ回数も減るよ。
付き合い始めたときよりはさ、
どんな夫婦だってそういうものでしょ?
俺は遥のこと好きだし、
それは別に変わってないんだから」
「じゃあ子供のことはどう考えてるの」
「その時はその時でがんばるし」
「……がんばるの? がんばらないとできないの?」
「いや違う、今のは。そういうことじゃなくて」
「ひどくない? 」

――――――1ミリも笑えない地獄のような会話である。

ドラマのヒロイン遥は、プロポーズを受けたもののもう一年半もセックスしていない婚約者との「結婚にむけて」、もうこれ以上は避けては通れない、と腹を括ってレスの話題をようやく切り出した。直後の会話が、これである……。

遥は言い方を間違えたのか? 違う。
どう話そうが、互いに傷つくのがこの話題。

結婚を考えるほどに「好き」ではある相手と、
話し合うだけで互いの心のセンシティブゾーンが
「鋭く傷つく話題:第一位」→「私と貴方のセックスレスについて」。

だって、どんなに言葉を選んでも、そのすぐ裏にある質問そのものはストレート。
声に出さなくても、相手に伝わる。“ねぇ、もう私に発情しないの?”
“そうなんだよね……”なんて相手も声に出して認められるはずもないが、セックスの誘いを拒むという行動が何よりもそれを示していて、言葉で確認し合うまでもなく女はその事実に最も傷ついている。
男女逆でも同じこと。
かつては自分に発情していた最愛のヒトが、共に時を重ねた結果、このように変化するって残酷だ。―――が、生活の中に溶け込んだ身近な相手に対して発情しづらくなるのは、それこそ本能的な自然現象でもあるわけで……。

誰も、悪くない。
だからしんどい。

しかも、
話し合えば解決する問題
でもないところがまた最悪。
発情と話し合いとは油と水。

……なんかごめん。
……いや、ごめん。

どちらも悪くなくても互いを傷つけてしまっている自覚はあるため、喧嘩へと発展しがちな話し合いであっても、ラストステージでは謝り合うことが多い。

世界で一番切ない謝罪だ……。

が、しかし、昼にそのような謝罪会があった日の夜、ベッドの中での気まずさは発情から最も遠いところにある……。
仕方なく手を出されるって、女にとっては屈辱的ですらあるし、なによりも悲しい。男にとっても、好きな気持ちに嘘はないのに、そんな気持ちにさせてしまっていることが心苦しいし、かといって今日もこのまま寝るというのは法律違反なみの重罪のように思えてならない。では、いざーーーーsex(勢いもないので小文字)。

嗚呼、
義務と演技?
愛とは何だ!

そう。切ない。だけど「愛」と「恋」とは似ていて非なるもの。
「発情」と「恋」とはわりとセットであり、フワフワと宙に浮くような気分ですら、「性欲」なのか「恋」なのか時には見分けがつきづらくなるほどに似ている。(なんだその中学生男子のような混同は! と思われがちだが、ここはジェンダーレス(?)。恋愛初期において、どっちだかまだわからん、と首を傾げる女は少なくない)。
そんな「恋心」が深くなり定着し、関係の中に「愛」がうまれ、二人の間に「恋」と「愛」とが共存するゾーンは年単位で存在する。(最もホットな黄金期)。が、そこからはグラデーションを描くように少しずつ「恋」が薄れて「愛」のほうが濃くなってゆく。

愛の永遠はありえるが、
恋の永遠はありえない。

そんなのって寂しすぎる……とロマンス派は嘆くが、あるハリウッド女優が吐いていたパンチラインが私は忘れられない。
「恋が永遠に続かないって嘆く人もいるけど、私はThank God ! (和訳:神様よくやった! ) って思っているわ。恋している時の脳の状態って異常なのよ。あの状態が永遠に続いてしまったら、仕事も育児もなにもできやしないわ!」
ぐぅの音も出ない。正論でしかない(笑)。

生活との相性が良いのが愛で、
セックスと相性が良いのは恋。

なので、遥の婚約者、奏多のセリフ「付き合いたての頃よりセックスの回数が減るのは当たり前。どんな夫婦もそんなもん」というのも正論ではある。―――が、問題は、これから結婚しようという二人のあいだにセックスが「既にゼロ」というところ。
二人のように、長く付き合っていて同棲(生活)もしているため「恋愛のホットな時期」を既に「通過済み」のカップルは多い。それはそれでピースで生活するには良いのだが、「恋の勢いとセックス」とをダブルで失い、「永遠の誓い」を前に足がすくむのは当然だ。
そもそも「結婚」とは、ここから五十年以上「健やかなる時も病める時も」つまりは何があっても「お互い以外とはセックスしないこと」を神様と親族の前で誓い合う行為でもある。
未来なんて誰にもわからないのに、丸っと信じ切ってしまうというロマンが必要。近い相手には発情しにくくなることも含めた動物的本能にまっこうから逆らって、人間として頑張ります、という気合いも必要。
よくよく考えたらこれ、正気の沙汰ではできないことなのだ。
だからこそ結婚に踏み切るには、恋の勢い(情熱的な狂気:恋愛結婚)または、セックスライフなんかよりも将来の安定と現在の安心を優先するという冷静な覚悟(婚活:お見合い結婚)のどちらかが必要になってくる。

さて、「恋の勢いもセックスも失ったけど大好きな彼氏」との結婚は成り立つか。
実際にレスのまま結婚し、今も仲の良い家庭を築いている夫婦を私は複数知っている。子供もいる。人工授精での妊娠のケースが多いが、それも今では全く珍しいことではない(レスではなくても、不妊治療を経て子供を授かるカップルは増えている)。産後の性欲低下により、レスそのものに不満も抱かなくなったという声も聞く。
だから答えは「イエス」。ただし、やっぱり人による。
性欲も相性なのだ。互いになくても平気なら、なにも問題ない。が、どちらかが不満を持っている場合はやはり、性的な関心は家の外へと向きがちでーーーー

「遥、結婚なんて無理な約束
しないほうがいいんじゃないの。
外でセックスしたら訴えられるんだよ。
――――――――――――無理でしょ」

遥の親友の恭子のこのセリフの最後には、「あんたには(無理でしょ)」という主語が思いやりにより省略されている。
と、いうのも遥、一話、二話と連続で、ドラマ自体もまだ始まったばかりだというのに、もう二人の男と浮気をしているのだ。(!)
レスで性欲が爆発する気持ちもわからなくはないけれど、夢中になれる仕事も、29歳でプロポーズまでしてくれる優しい彼氏もダブルゲットしているのに、コレ。
脚本を読んだ時点で「ヒロインの好感度は大丈夫かな⁉」と思わず青字を入れたほど、遥は前代未聞のヒロインである(笑)。
ただし、ある意味とてもリアル。
男女問わず、性欲が強い人のバイタリティは仕事にも恋愛にもいかされている場合が多い。つまり、良くも悪くも「生き物として強め」なのだ。そして、強いオスにもメスにも異性は寄ってくる。つまり、浮気のチャンスまで人より多め……。

「信頼」「尊敬」「セックス」
三つのうち二つがある限りは
カップルは続くと言われている。

「セックス」が消えていても「信頼」と「尊敬」とで結びついていたために、プロポーズまで関係がすすんだ遥たちだったが、遥の浮気が奏多にもしバレたら、「信頼」は消えるし「尊敬」もとうぜん危うい。
当初はヒロイン遥の好感度を心配したものの、「セックスは私にとっては大事だよ?」と目に涙を溜めて奏多に訴えた遥の切実さ(さとうほなみ氏の熱演ふたたび!)に、胸が痛くなるほどの共感を寄せた女の子は多かったはずだ。

レスによる浮気はセーフなのかアウトなのか。または、アウト寄りのセーフなのか、セーフもクソもないアウトなのか(細かい)。
カップルの行方をドラマで追いながら、次回さらに掘り下げます!

◆次回予告◆ 2/4更新
#03「 触らないで、やりたくなっちゃうから 」


profile_LiLy
作家。81年生まれ。神奈川県出身。蠍座。N.Y.、フロリダでの海外生活を経て上智大学卒。著作多数。Instagram_@lilylilylilycom


◆「ABEMA」オリジナルシリーズ新作ドラマ

『 30までにとうるさくて 』番組概要


毎週 夜10時スタート(全8話)
企画・プロデュース:藤野良太
脚本:山田由梨
演出:金井紘
出演:さとうほなみ・山崎紘菜・佐藤玲・石橋菜津美

<あらすじ>
「30歳までに結婚しないと…って焦るけど、なんで?」「子供を産むなら年齢は気にした方が良い?」 「29歳、私たちこのままでいいのかな」など、“30歳”という節目の年齢を意識する女性ならきっと誰もが一度は感じたことがある悩みや焦り、怒りを抱えながらも、自分たちの意思で乗り越えていく姿を、ユーモラスかつ痛烈にオリジナルストーリーで描く、現代の東京を生き抜く29歳独身女性たちの恋、キャリア、性、友情の物語。


番組の視聴はこちらから♡

illustration_ekore(@igari_shinobu & @hello_chiharu)
edit_SWEET WEB
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