トップアイドルから幼少期の夢であったオートレーサーへ22歳で転身、2020年にレース中のケガにより2年のリハビリ生活へ・・・。そんな森 且行さんの生きざまを描いた映画『オートレーサー森且行 約束のオーバル 劇場版』が公開!sweet web独自インタビューをお届けします!

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――この映画を観ておいて、写真撮影で無茶なポーズをさせてしまいすみません! 大丈夫でしたか?

 もう全然大丈夫ですよ。これもリハビリのうちなので。

――ありがとうございます。そもそもなんですが、オートレースの世界に入られてからは、積極的にイベント出演したり密着取材を受けるということもなかったと思うんですが、この作品はなぜOKしたんですか?

 そうなんですよ。基本的に、イベント出演や取材はずっと断ってきていたんですよ。まず、イベント出演に対して考えが変わったきっかけがありまして。船橋のオートレース場がなくなるかもしれないということを聞いて、僕が表に立つことで状況を少しでもよくすることができるんじゃないか、と思ったんです。それで、少しずつイベントに出るようになったんですよ。でも、僕じゃ微力だったのか、船橋のオートレース場はなくなってしまい……。もうそこからは本当に危機感を持って、バンバン表に出ていこうと決めました。

――オートレース界全体のためだったんですね。

 そうなんです。船橋がなくなってしまった時点で、ほかのオートレース場も共倒れするんじゃないか、なんて言われた時期があったんですよ。僕がトークショーなどをすることで、ちょっとでもオートレースに興味をもってもらえるなら……。それが最大のきっかけです。なぜなら、僕が走る場所がなくなっちゃったらそこでおしまい。挑戦できなくなってしまうので。

――このドキュメンタリー作品に関してはどうでしょう? カメラが密着する、しかもケガ後の辛い時期に入ることをどうして了解してくださったんでしょう?

森 ケガをした後、復帰に向けてリハビリと手術を繰り返しているときに取材のオファーが来たんですが、レースで走れていなかったので、ファンの皆さんに少しでも自分の姿を見せられればと思ってOKしました。でも、すごかったのはそこからなんですよね……。監督の熱量がすごかった。『情報7daysニュースキャスター』、『情熱大陸』と、次々とTBSの番組取材の仕込みが入りまして(笑)。そのなかでも『情熱大陸』は、僕自身がすごく大好きな番組で、自分が出られるなんて思ってもみなかったから、逆に「出たいです」ってお願いしたんですよね。

――監督としては、しめしめ、って感じでしたね(笑)。

 そうですよね(笑)。特に『情熱〜』は本当にすごく反響が大きかった。それで、僕が味をしめちゃったところもあります。

あの番組に出ると、どこ行っても声かけられるようになるのは覚悟していたんですが、野次じゃないんですよ。みんな頑張れ頑張れって言ってくださるのがすごく励みになったんですよね。それで、「わ、これはすごいことやったんだな」と思うようになりました。

――監督、よくぞ引っ張り出してくれた……。

 そう。そこで僕も考えを改めて、ファンのみんなが喜んでくれるんだったらと思うようになりまして。でも、番組の次は映画って聞いたときは、ちょっとピンとこなかった。「TBSドキュメンタリー映画祭」の作品とはいえ、僕を映画にしてどうなるの? できるのかな? なんて思い、最初はもうお断りしようかと。でも、監督からどうしても映画祭に出品したいと説得されました。そしたら、映画祭で監督が賞をいただいちゃった。僕を撮った映画で賞をとれるだなんて思っていなかったから、本当によかった。しかも、これでテレビのディレクターから映画監督になっちゃったんですから。残念だったのは、そのころには復帰できてるはずだったんですけど間に合わなくて。そこが申し訳ないなっていう思いがあったんですよ。きっとファンの皆さんも、復帰戦を待ってくれていると思ったし、僕の復帰が遅れちゃったことがいけなかった。そのときに、何度も監督が僕の復帰戦まで追いかけさせてくれと言ってきてくれたんですが、追加取材は何度も断ったものの、最終的には「僕は演技しませんから、どうなっても知りませんよ」とOKしました。

――演技じゃできないことだらけですよ。劇的なエンディングで、先生たちも大泣きだったじゃないですか。

 そうなんですよね。でも、優勝できなかったから、そこだけがちょっと心残り。優勝した姿を映画に取り込めれば、最高だったんですが……。だからといって2度目、3度目はないので、これで完結です。

――初監督の映画にして、素晴らしいできだったと思いますよ。

 そうなんですよね。初めて会ったときは「映画監督はやったことない」っておっしゃってたから、僕もびっくりしましたよ。番組のディレクターさんなのに、なんで映画監督? それできるの!? って思ってましたから。担当の番組を抱えているから、その仕事の合間にカメラ持ってきて。そのあと自分で編集もして。すごい仕事量をこなしていたと思います。

――リハビリのシーンにはほとんどカメラが入ってなかったんですが、あれは敢えて撮らせなかったんですか?

 いや、コロナ禍だったからですね。何度か交渉はしたんですが、第三者が病院に入ることが禁止されていたんですよ。監督からぜひ動画を収めてくれ、と言われていましたから、先生のスマホと兄のスマホで撮影した動画が使われています。

――リハビリをしている方々へのエンパワーメントにつながる、貴重な映像だったと思います。

 そうですよね。体育座りができなかった人が歩けるようにまでなったリハビリの過程ですから。とにかく先生方のおかげです。先生から、これをやれば大丈夫、と言われたことを全部やってきただけですから。

――今はある程度無理しなければ通常通りの生活ができるんでしょうか?

 もう大丈夫ですね。ただ、足に麻痺が残っているので、どうしてもうまく動かせないときがあります。装具をつけていれば全く問題がないですし、慣れてる場所だったら装具も杖もなしで段差を越えられます。もちろん、たまに転びますけどね。レース中はブーツで固定しているので、安定しています。

――映画でも描かれてた通り、ギアチェンジの時がうまくいかないんですよね。

 そうです。ブーツを履いていても、ギアを変えた後の足を戻すのが難しくて。でもそれは練習で補うしかない。今は100回やって1回失敗するぐらいかな。とにかく練習して慣れる。そしたら何とかなる!

――ケガ前と今を比べて、体力維持や自分の体の老化について考え方はどう変わりました?

森 病院で規則正しい生活をしたことが、今となってはからだのためにはよかったと思っています。それまでは夜遅くまで暴飲暴食だらけだったのが、早寝早起きで食事の時間も決まった生活になったんですから。怪我をする前、僕の体重は60キロ前後だったんですけど、入院中の生活をきっかけに心を入れ替えて、体重を落とす方向にシフトしました。体重が軽ければ軽いほど、少しでも速く走れるんじゃないかなと思ったんですよね。今は50キロ台をキープしてるんです。しかも、体重を前よりも減らす生活を心がけると、体の調子も良くなるんですよ。ただ、54キロがミニマムでした。54キロを割ると声が出なくなってくるんですよ。

――そこまで分析できてるんですね。

 オートレースは他の競技スポーツと比べたらスタミナがいらないけど、落としすぎるとダメでしたね。僕の場合、練習量がすごいから、落としすぎるとバテちゃう。

――体力を維持しながらウェイトを落とすのってすごく難しいですよね。食生活から変えないと。

 もちろん基本、夜は炭水化物はとりませんね。色々試したんですけど、朝は絶対しっかり食べないとダメ。朝食べないとやっぱ頭も働かないし、体も動かないし。むしろ夜は抜いてもいいくらい。お酒は飲みますけど、飲みすぎると絶対重たくなるんで、コントロールしています。こういう自己管理ができないと速く走れないんですよ。

――レーサーの皆さんのストイックさ、すごいですね……。

 速い人の平均体重って52〜3キロくらいなんですが、そもそも小柄なんですよ。しかも、最近オートレーサーになる人達って、ロードレースやモトクロスのプロの世界で走ってた人たちなんで、能力が違いすぎるんです。僕たちの時はド素人がオートレース選手になるっていうのが当たり前だったんですけどね。でも面白いもので、負ける時もあるけど、僕が勝てる時もあるので、そこがレースの面白さです。

――最後の質問です。森さんが、やりたいことをずっと続けられる原動力はなんでしょう?

 単純なんですが、やっぱり大好きだからですよ。嫌いなことだったら、多分もう続いてないですし、ケガをしたときに諦めてると思います。本当にオートレースが大好きだから、生涯現役でいたいと思っています。からだが悲鳴上げるまでは。一生懸命、楽しんで走ることを目標に、できる限り長くやりたいと思っています。

●info.
『オートレーサー森且行 約束のオーバル 劇場版』
story:アイドルとして人気絶頂期に、幼少期からの夢だったオートレーサーに転身した森且行。2020年にオートレースデビューから24年目にして初めての日本選手権優勝を果たすが、その直後のレースでケガを負う。手術とリハビリの日々にカメラが密着し、森本人や家族、知人などのインタビューを収めたドキュメンタリー。

監督・編集:穂坂友紀/出演:森 且行 ほか/ナレーション:萩原聖人/配給:KADOKAWA/公開:11月29日より、新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー
© TBS

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