――ハードな展開や生き死にが描かれる作品にも多く出演されていますが、どのように気持ちの切り替えをしていますか?

僕はあまり引っ張られないタイプだと思います。演じている時はちゃんとやるんですけど、その前後で気持ちを引きずるようなことはあまりないですね。「これは作品の中だけのこと」と割り切って捉えているところがあります。

引っ張られはしないですが、逆に作品の中では何でもアリなので、楽しい気持ちの方が大きいかもしれないです。

――視聴者の皆さんは感情を持っていかれる方も多いと思います……(笑)。

そうですよね。むしろ演じている自分より、一視聴者として自分が出演している作品を観ているときの方が感情を動かされるかもしれないです(笑)。

演じている時とはまた違って、普通に一視聴者として作品を楽しんでいるので、その中で生まれる感情を自分の中に“輸入”するというか、ちゃんと受け取ってる感覚はありますね。

 

――声優というお仕事をされていて一番辛かったこと、逆に声優でよかったと感じた瞬間など教えてください。

やっぱり風邪をひいたり喉を壊したり、体調を崩してしまったときは辛いですね。そういう時って気持ちはあっても声にならないので、「自分ってこんなにセリフうまく言えなかったっけ?」みたいに落ち込むこともあります。
そういう状態が長く続くと、やっぱり不安になりますね。でも逆に、調子が戻ってくると「これくらいはできるよな」って、自信を取り戻せることもあるので、そういう浮き沈みも含めて、この仕事の難しさだなと感じます。

あと、コロナ禍の時期は掛け合いの収録ができなかったのが大きかったですね。僕もそうですけど、特に若い世代の声優さんたちは、先輩と直接関わる機会が減ってしまって、技術や表現を学ぶチャンスが少なくなってしまったので、そういった面でも辛さがあったと思います。

逆に声優でよかったなと思ったのは、年齢に縛られずにいろんな役に挑戦できるところですね。自分の成長とともに演じられる役の幅が広がっていったり、求められる役柄が変わってきたりするので、やっていて本当に飽きがこないんです。

新しい作品に出演する度に「これ難しいな」とか、「もっとこうできるようになりたいな」と思うことが必ずあって、毎回新しい発見や課題が生まれる。その時その時に一生懸命になれるので、すごく変化があって面白い仕事だなと思います。

――それこそ10年以上同じ役を演じられることもありますよね。そういうときって、素人目には「声が全然変わっていないな」と感じて、すごいなと。

そうですね。でも実は結構大変だったりします。やっぱり10年前とは自分も変わっているので、「当時はこうだったけど、今だったらこうしたいな」っていう思いも自然と出てくるんですよね。変わらない良さっていうのももちろんあるんですけど、“今だからこそできる表現”とか、逆に“10年前にしか出せなかったもの”みたいな、自分の中での変化や違いはちゃんと感じていて。

でも、それはもう成長した結果でもあるし、時間が経って変わるのは当然のことなので、「それはそれ」として割り切っている部分もありますし。そういう意味では、同じ役でも演じるたびに新しい発見があるので、そこはすごく面白いですね。

声優の花江夏樹