F1レースの世界を描いた映画やドキュメンタリーは数あれど、ここまでリアルなドライブ感を追求したスターキャストの作品はこれまでなかった。その名も『F1/エフワン」。『トップガン マーヴェリック』(17) を世界的に大ヒットさせたジョセフ・コシンスキー監督が手がけた、ほぼ“地上版トップガン”。「目標は観客をF1のマシンの中にぶち込むことだった」と監督は語る。

「じつはF1はアメリカではマイナーなスポーツ。だからこそ、2時間ちょっとの時間でF1の魅力を全て知らしめないといけなかったんです。もちろんそれだけじゃフィクションの映画として面白くないから、スリリングなアクション、ユーモア、ロマンスなどを盛り込んで、観客をこのスポーツのとりこにさせようと思ったんですよ」

主演はブラッド・ピット。彼が演じたソニーの元チームメイト・ルーベンはハビエル・バルデム、と大スターの共演。とはいえ、撮影時に還暦を迎えたブラピはどれだけのトレーニングを!?

「現物のレーシングカーをF1のコースで運転できるようになるためには、3~4カ月の集中特訓が必要でした。とはいえ、ブラッドは最初からかなりいい線いってたんですよ。彼はもともとオートバイに乗っているから、レーシングカーに適応しやすかったんでしょう。最終的にはF2(フォーミュラ2)のマシンまで運転することができました。僕らが用意した撮影用のマシンはF2ベースでカスタマイズしてますが、見た目も性能もほぼF1にデザインしました」

さすがトム・クルーズと共に地獄の戦闘機特訓をこなした監督。本物への追求が半端ない。「ブラッドをはじめ、役者の顔が映っているシーンは全部本人が運転してますよ」とサラリと答える。
「彼が演じたソニーは、僕としても念願のキャスティングだったんです。ブラッドは僕にとってもアイコンであり、彼はスティーブ・マックイーンやポール・ニューマンのような銀幕の大スター。彼の芝居、たたずまい、テクニック、魅力全てが伝えられるのは、この役しかない、と僕は思っていました。この作品を観たら、きっと皆さんもそれを感じ取っていただけると思います」