「ユニバーサル・スタジオが『ヒックとドラゴン』実写化企画で私に声をかけてくれたとき、率直に言ってどうすればいいか分かりませんでした。私はアニメーションが専門ですからね。でも、仮に誰か他の人が実写版を監督したら、それを私が観たいかというと“ノー”。そのため、私は新人の実写映画監督として一から学び直すことになりました」
オリジナルのアニメーションから飛び出してきたような世界観とキャストによって、よりリアルに、さらに人間味ある感動物語になった実写版。とはいえ、ドラゴンは現実にいないのでCGとアニマトロニクス(可動式の模型)です。主人公ヒックの相棒トゥースをはじめとするドラゴンの描写は「特にトゥースが難しかった」といいます。
「あらゆる種類のドラゴンが出てきますが、ワニやセイウチなど、インスパイアされた動物をもとに近づけることができました。が、トゥースはかなり難しくて。アニメ版は私とクリス・サンダースの2人で考え出したドラゴンでしたが、他のドラゴンと違って哺乳類をベースにデザインしたんです。全体の見た目はサンショウウオと黒豹をかけ合わせてますが、大きな目や口、それに人になつく様子はネコがベース。これをCGにするとなると、アニメっぽくなってしまうし、実体を持つアニマトロニクスのデザインにして説得力をもたせるのは難しかったですね」
また、舞台となるバイキングの時代の村も、実際に作り込まれました。これが本当にすごい。「アニメーション出身で実写映画をやると、リアルな質感にこだわることができることを知りました(笑)。それによって間違いなくファンタジーの世界への没入度が変わります。ヒックの村を再現するために、アイスランド、フェロー諸島、スコットランドなどをヘリコプターで観察して最適な場所を見つけ出し、本物の村を建設しました。そこに最高のスタッフとキャストが乗り込んで作り出した世界と物語は、特殊効果に慣れた映画ファンでも驚いていただけるほどだと思いますよ」
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PROFILE
よしひろまさみち
『スウィート』のカルチャーページでもおなじみの映画ライター・編集者