Guillermo Del Toro
ギレルモ・デル・トロ
■プロフィール
1964年10月9日、メキシコ生まれ。17年の『シェイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー賞作品賞、監督賞ほか4部門を制した。
2018年に開催されたアカデミー賞を制したラブロマンスの傑作『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)から5年。ギレルモ・デル・トロ監督が手掛けたのはサスペンス・スリラーの古典『悪魔の往く町』(47)を再解釈した『ナイトメア・アリー』。野心たっぷりで見た目が超イケイケな青年スタンが、人の弱みを糧に出世しようとするさまを描いた傑作です。
今作の特徴はオリジナル版よりもずっと、彼をとりまく女性キャラクターがフィーチャーされていること。「スタンは3人分のキャラクターをもっていたから、3人の女性をからめたかったんだよ」と監督。
「飲んだくれだったスタンの父、カーニバルで知り合う残酷な男、人を信じない大金持ち。スタンは劇中に出てくる3人の男性の性格を全部持ち合わせている。だから、彼をとりまく女性も3人で、心の広い占い師のジーナ(T・コレット)、恋に夢中になるモリー(R・マーラ)、そして敏腕セラピストのリリス博士(C・ブランシェット)。彼女らはそれぞれスタンに持続可能な未来を提案するのに、彼は耳を貸さず、彼女らとの関係を壊していくんだ。そして彼は人生のどん底を味わうことになる。脚本段階からイメージができていたから、3人の俳優にあて書きしてたんだよね。理想的なキャスティングができて幸せだったよ」
利益しか考えない自分勝手さは破滅を導く。スタンにとって運命の女性が3人も現れるのに、ありがたみを感じず利己主義を貫く、というストーリーは今の不安な世の中に対してのメッセージのよう。物語にコロナ禍の影響はあったのかと聞くと、「本作の撮影中にパンデミックが始まり、撮影は半年ほど中断したんだ。その間に脚本は書き直してるんだよ」とな!
「変更したのは、モリーとスタンの関係をより甘いモノにしたことや、ジーナとの関係もより掘り下げたことなどだね。それによってスタンが落ちていくさまがより強調されたと思うよ。ルッキズムやマイノリティ差別を描いた『シェイプ・オブ・ウォーター』のときに、たまたまアメリカではトランプ政権になり“タイムリーだ”って言われたけど、今回も時代に即したテーマになっちゃった……。預言者じゃないんだけどね(笑)」
主人公スタンはスーパーハンサムでモテモテで名声に対して貪欲。じつはこのイメージは70年以上前のオリジナル版から一貫。「だからブラッドリーがよかったんだよ(笑)。芝居がうまいのはもちろんだけど、世界の恋人ってルックスの持ち主はそうそういないからね」
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『ナイトメア・アリー』
story: カーニバルの一座に入り下働きを始めたスタン(B・クーパー)。野心に満ちた彼は、読心術の使い手からスキルを盗んで独立。一流の興行師に大出世するのだが……。
監督:ギレルモ・デル・トロ/出演:ブラッドリー・クーパー、ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ ほか/配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン/公開:3月25日より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
■ライター プロフィール
よしひろまさみち
『スウィート』のカルチャーページでもおなじみの映画ライター・編集者。日本テレビ系『スッキリ』ではレギュラーで映画紹介を務める。