【山﨑賢人】『ゴールデンカムイ』血湧き肉躍る、埋蔵金争奪サバイバル・バトル開始!
sweet誌面で映画や小説・漫画を毎号紹介している物書き・SYOさんが今月の推し映画を紹介する連載【ものかきSYOがスウィートガールに捧ぐ今月の推し映画】
vol.12で紹介する映画は、シリーズ累計2700万部突破のベストセラー漫画がついに実写化! 大人気俳優・山﨑賢人で贈る『ゴールデンカムイ』。
2024年の日本映画界、“顔”になりそうなキーマンが山﨑賢人。現時点で『ゴールデンカムイ』(1月19日公開)、『陰陽師』(4月19日公開)、『キングダム 大将軍の帰還』(7月12日公開)と主演映画が3本もアナウンスされている。いずれもエンタメ大作であり、『ゴールデンカムイ』『陰陽師』はシリーズ化も期待できるビッグコンテンツ。『キングダム』にいたってはなんと第4作だ。Netflixシリーズ『今際の国のアリス』シーズン3の制作も発表されており、ここから山﨑はますます規格外な活躍を見せることになるだろう。
その山﨑賢人イヤーの始まりを告げるのが『ゴールデンカムイ』。野田サトルの人気漫画を山﨑ほか、山田杏奈・眞栄田郷敦・矢本悠馬・玉木宏・舘ひろしらの豪華共演で実写化するビッグプロジェクトだ。ただ本作、個人的には結構心配もしていた。というのも、僕自身が原作を読破するくらいにはファンであり、「実写化無理じゃない?」という想いがあったから。
「ゴールデンカムイ」は、ざっくりいうとアイヌから強奪された金塊をめぐる争奪戦を描いたバトル作品。その在処は、網走監獄を脱獄した囚人24人の身体に彫られた刺青に記されているという。うわさを聞き付けた“不死身の杉元”の異名を持つ戦争帰りの猛者(山﨑賢人)とアイヌの少女・アシㇼパ(山田杏奈)は、大日本帝国陸軍の鶴見(玉木宏)や新撰組の土方(舘ひろし)と死闘を繰り広げる羽目になり――。24人分の刺青を手に入れ、金塊を手にするのは誰だ?という大スケールの物語が、全31巻にわたって展開してゆく。ただのバトルものではなく、日露戦争後の北海道を舞台にした歴史ものであり、当時の時代背景やアイヌ文化も綿密な取材のもとしっかりと盛り込まれているのが特徴だ。
ヒグマとの死闘やド派手なアクション(雪山でのロケは必須)、濃すぎるキャラクターたち、2時間では到底収められないスケ―ル感等々……どう考えても実写化は無茶。しかしそこに臨むというなら、相当なクオリティのものを用意せねば見るも無残なことになってしまう――。一人の原作好きとして戦々恐々としながら観たのだが、冒頭の日露戦争の激戦地・二〇三高地のシーンから「おっこれは“良い”ぞ……」と不安を払しょくしてくれた。懸念していたチープさなどなく、切れ味鋭いカメラワークにアクションに熱量あふれる芝居……その総合力としての映像に、しっかりした“強度”を感じられたのだ。
しかも、ヒグマとの戦闘をはじめとして「全部ちゃんとやる」。手投げ弾で人が吹っ飛んだり、馬ぞりのうえでバトったり、雪山でサバイバルをしたり竹串を顔にぶっ刺されたりと「当然でしょ」的なテンションでやってくれるため、圧倒されつつ「実写化できないとか言ってすみませんでした!」という気持ちに。アシㇼパの変顔等々、原作の細かい(がとても重要な)ネタもきちんと拾ってくれて、大切なテーマである「異文化理解」も尺をしっかり割いて丁寧に描いてくれる。「チタタㇷ゚」に代表されるアイヌ料理や「ウェンカムイ(悪い神)」等々、解説も交えて網羅しているのが嬉しい。
山﨑や山田の気合の入った演技も好感を持てるし、杉元とアシㇼパの良き仲間となる“脱獄王”白石役の矢本悠馬ほか、出演陣がいちいちハマっているのも大きな見どころだが、個人的にビリビリ痺れたのが鶴見役の玉木宏の圧とその部下・二階堂兄弟役の栁俊太郎のクレイジー加減(一人二役!)。玉木のバッキバキになった目、栁の“解釈一致”な原作への寄せ等々、楽しめる要素が多々。変に展開を急がず原作の序盤に留める構成なのも愛を感じられた。映画を通してこの物語を知る方にはエンタメ大作として楽しめるだろうし、原作ファンにも満足できる仕上がりになっているように感じる。
『ゴールデンカムイ』
story:舞台は気高き北の大地・北海道。時代は、激動の明治末期―――。日露戦争においてもっとも過酷な戦場となった二〇三高地をはじめ、その鬼神のごとき戦いぶりに「不死身の杉元」と異名を付けられた元軍人・杉元佐一は、ある目的のために大金を手に入れるべく、北海道で砂金採りに明け暮れていた。そこで杉元は、アイヌ民族から強奪された莫大な金塊の存在を知る。金塊を奪った男「のっぺら坊」は、捕まる直前に金塊をとある場所に隠し、そのありかを記した刺青を24人の囚人の身体に彫り、彼らを脱獄させた。囚人の刺青は24人全員で一つの暗号になるという。そんな折、野生のヒグマの襲撃を受けた杉元を、ひとりのアイヌの少女が救う。「アシㇼパ」という名の少女は、金塊を奪った男に父親を殺されていた。金塊を追う杉元と、父の仇を討ちたいアシㇼパは、行動を共にすることとなる。同じく金塊を狙うのは、大日本帝国陸軍第七師団の鶴見篤四郎中尉。日露戦争で命を懸けて戦いながらも報われなかった師団員のため、北海道征服を目論んでおり、金塊をその軍資金代わりに必要としていた。そして、もう一人、戊辰戦争で戦死したとされていた新撰組の「鬼の副長」こと土方歳三が脱獄囚の中におり、かつての盟友・永倉新八と合流し、自らの野望実現のため、金塊を追い求めていた。
公式サイト:https://kamuy-movie.com/
©野田サトル/集英社 ©2024 映画「ゴールデンカムイ」製作委員会
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PROFILE
ものかき
SYO
1987年福井県生まれ。 東京学芸大学卒業後、複数のメディアでの勤務を経て2020年に独立。 映画・アニメ・ドラマを中心に、インタビューやコラム執筆、トークイベント・映画情報番組への出演を行う。 2023年公開『ヴィレッジ』ほか藤井道人監督の作品に特別協力。『シン・仮面ライダー』ほか多数のオフィシャルライターを担当。装苑、CREA、sweet、WOWOW、Hulu等で連載中。
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