Taika Waititi
タイカ・ワイティティ
1975年8月16日、ニュージーランド生まれ。コメディ劇団でキャリアを積み、2014年の『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』で世界的な評価を集める。『ジョジョ・ラビット』(19) ではアカデミー賞で6部門候補入りし、脚色賞を受賞。
2026年に開催予定のFIFAサッカーワールドカップ(以下W杯)は、現在全世界で2次予選が開催中。いい機会なので、映画で「W杯といえば」なエピソードを振り返ってみるのはいかが?
2002年に日韓共同開催で盛り上がったW杯の予選で、なんと0対31という大敗を喫し、その後も1ゴールもできずにいたという米領サモア代表チームの実話をもとにしたコメディが『ネクスト・ゴール・ウィンズ』です。
これ、本当にすごい。実話と思えないくらい、出てくるキャラというキャラが濃くて、起きる事件も想定外。マジでなんじゃこりや!?レベルなのに、ラストは多様性豊かな文化への敬意と感動でいっぱいになるんですよ。
「この話を知ったのは、2014年のドキュメンタリー映画『ネクスト・ゴール!世界最弱のサッカー代表チーム0対31からの挑戦』を観たとき」というのは、本作の監督を務めたタイカ・ワイティティ。ラグビー大国ニュージーランドの人だもの……オンタイムに知らなくて当然よね。
「そうそう。ラグビーだったら速攻知ってたけどね(笑)。それにしても、すごい話だよ。1ゴールもできない世界最弱のチーム、メンバーはみな兼業、トランスジェンダーの選手もいて、おまけにのんびり屋揃い。こんないいネタ、そうそう転がってないと思って、同じポリネシア文化で育った僕ならいい劇映画にできると思ったんだ」
性格に難アリのコーチがチームを「家族」と思うことで、彼もチームも成長していくという物語。その選手の中心人物であるトランスジェンダー……現地の言葉ではファファフィネと呼ばれる女性、ジャイヤの存在がもっともユニーク。監督は「彼女のおかげで競技スポーツも変わったんだよ」とな。
「何が素晴らしいって、ファファフィネという概念が何百年、何千年にもわたり、島文化の一部として受け入れられ、受け継がれてきた、島民にとってはごく自然なコンセプトだっていうこと。
なにせW杯の公式試合で正式に選手として出場した初のトランスジェンダーだったわけだから、FIFAに限らず、トランスジェンダーの選手が堂々と公式試合で活躍できるようになったのも、彼女の影響があったからこそ。彼女は今、FIFA平等親善大使兼スポークスパーソンとして、FIFAという組織におけるLGBTQ+コミュニティーを代表し、不平等や地位向上といったことに働きかけているんだ」
『ネクスト・ゴール・ウィンズ』
story:W杯予選史上最悪の0対31で大敗を喫した米領サモアのサッカー代表チームに、立て直しのためにFIFAから新たなコーチが派遣される。ところがそのコーチ、トーマス(M・ファスベンダー)もキレやすい性格ゆえに問題を抱えて崖っぷちに……。
監督:出演:タイカ・ワイティティ/出演:マイケル・ファスベンダー、オスカー・カイトリー、エリザベス・モス ほか/配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン/公開:2月23日より全国ロードショー
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PROFILE
よしひろまさみち
『スウィート』のカルチャーページでもおなじみの映画ライター・編集者。