
高橋一生・斎藤工・水上恒司、3人で築いた“運命共同体”の関係性
――高橋さん、斎藤さん、水上さんの3軸で進められるストーリーということで、制作中は3人で濃密な時間を過ごされたと思いますが、それぞれの方に対して作品前と作品後でどのように印象が変化したか教えてください。
斎藤「高橋さんには以前僕が監督を務めた『blank13』という作品で主演をしていただいたことがあったので、一緒に物作りをさせていただいた俳優同士というのとは違う、唯一無二の存在だったんです。水上さんに関しては、僕は一方的に(水上さんの出演作を)拝見する立場だったのですが、作品を通して、彼の俳優として歩んでいるプロセスを勝手に想像して、なんて代わりの効かないお芝居をして、人の心に役を残していく人なんだろうって思っていました。さらに、近年の作品選びや作品に対するギアの入り方を見て、彼のアンテナの感度の高さや開拓していくエネルギーみたいなものを感じて、ご自身の足でご自身の道を歩んでいく方だなと。お二人とも、それぞれのビハインドみたいなものに僕が勝手に寄り添っている存在。今回の共演は原作を読んでいる最中にお伺いしたので、原作に(それぞれの役を)当てはめて読んだり、役をシャッフルして読んでみたりしていました」
――シャッフルした意味は?
斎藤「自分がほかの人の役をやりたいというわけではないのですが、年齢的な整合性はないけれど、役を入れ替えても成立するんじゃないかみたいな、謎の作り手の目線でいろいろ試した上で、この配役に合点がいきました。事前リハーサルで、お二人と時間を共有できたことが、作品にも反映されていると思います。俳優としての演技の前に“人として”その人自身が持っている部分を必要とされる現場だったので、俳優として過ごした時間というよりは高橋さんと水上さんと僕自身の“人として”の時間を共有させてもらった感覚です」
――現場で印象に残っているエピソードは?
斎藤「どのシーンでも、そこに映っていなくても、目の前に2人を始め皆さんがいてくださって。スタッフさんも含めてその空間にいる全員が、その時間に集中しているというのが、ちょっと今まで経験したことがないし、これからももしかしたら経験できないんじゃないかと思う時間でした。そういう意味でもお二人は僕にとって運命共同体という特別な存在になりました。この作品以前もそうでしたが、それ以降のお2人の出演作もより気になるようになって。あの松永組の時間を共有した2人の活動には常にアンテナをビンビンに張り巡らせています」
水上「そんなふうに言ってくださって畏れ多いです。僕はどの作品でも共演させていただく前の方の印象はあまり持たずに現場に入ることが多いんです。共演させていただいてからは、斎藤さん同様に次はどんな作品に出るのかなとか気になりますね。僕が、現場で印象に残っているのは、一生さんと斎藤さんの声のトーン。お二人ともすごく低くて響く、まさに僕が目指したいと思う声質をされているんです。その中で、僕が明らかに(年齢が)若い役ということもあり、声のバランスをどうすればいいかというのは最初に考えました。修司の役を仕上げていくときに、松永さんからのアドバイスを始め、一生さんや斎藤さんの芝居を受けながら修司が確立していくのですが、これだけ低いトーンの方々の中に、どんな声質の修司がいれば、この3人の関係性が面白く変わっていくのかを常に考えていました」
――斎藤さんの印象はいかがですか?
水上「松永さんも表現されていた言葉なのですが、斎藤さんは重力のある方。作品の中でも修司がペラペラ話しているのですが、七雄が一言発した瞬間にストンと空気が落ちていくような感覚があって。その斎藤さんの重力みたいなものはヤバいなと思いました。僕が目指しているところでもあるのですが、それはもうその人の中にあるものなので、なかなか出そうと思って出せるものではないんですよね」
――今作品は撮影期間が4カ月とお伺いしました。かなり過酷なスケジュールでの撮影現場だったのではと思うのですが、この現場を通して俳優として得たもの、作品後に俳優としての変化がありましたら教えてください。
斎藤「ちなみにフィジカルが一番大変だったのは水上さん。極寒の地で水に落ちるということをされているので、もう本当に足を向けて寝られないです。多分、あのとき体は死を覚悟したんじゃないかと(笑)」
水上「でも、あんまり映像では伝わらないかもしれない。温かそうな日差しの中での撮影だったので(笑)」
斎藤「そうなんです。伝わらないかもしれないけれどまず、そのくらい大変なことをしているというのを一つお伝えしたいなと。そして、作品以降変化した部分ですが、普段のオフの部分の自分の記録と記憶が、オンの時に役に立つという感覚が強くなったのは松永組の影響だと思います。なので、普段の何気ないパブリックな場所ではない時の自分のトーンや心の動きを覚えておいてそのままトレースできるように意識しています。もちろん作品にもよるし演じるキャラクターにもよるんですが、自分という素材を一番活かせるトーンは、普段のオフの時間にたくさん散らばっているということを教わりました」
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